研究課題/領域番号 |
21K07949
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
杉本 光繁 大分大学, グローカル感染症研究センター, 教授 (80397398)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | DOAC / 消化管出血 / 遺伝子多型 / 血中濃度 / 腸内細菌 |
研究実績の概要 |
高齢化社会が進行し抗血栓薬の内服者が急増している。抗血栓薬は脳循環器疾患の予防や治療の第一選択治療薬であるが、薬理学的特性より大出血のリスクが臨床上問題となる。薬物療法は薬効が適切にモニタリングされ、必要最低用量での調整が必要だが、直接経口抗凝固薬(DOAC)には投与量を規定する基準はない。近年、DOACの薬物動態や薬効の個人差が抗凝固作用や大出血の出現に影響を及ぼす可能性に注目が集まり、原因として薬物投与量、年齢、腎機能、薬物代謝酵素やトランスポーターの遺伝子多型、腸内細菌叢プロファイル、胃酸度、薬物種などが考えられている。更に腸内細菌叢の乱れが脳循環器疾患のリスクを増加し、DOACの薬物動態にも影響する可能性が報告されている。本研究は、DOAC内服時の抗凝固作用に対する腸内細菌叢と薬物動態学的関連因子との関係性を大規模臨床試験で明確にし、大出血のリスクの層別化スコアリング法を確立することを目的とした。 (1)抗血栓薬内服者の薬物動態関連因子と腸内細菌叢プロファイルの評価 (2)薬物動態や腸内細菌叢を考慮した層別化スコアリング法の有用性の検討 研究の概要: 本研究はDOAC内服予定者と健常者を対象に、DOAC内服前後に薬物動態関連因子を血液で評価するとともに、糞便を使用して腸内細菌叢を調べ、内視鏡検査で胃内の評価を行う侵襲を伴う介入研究、DOACを内服して早期消化管腫瘍に対してESDを施行した症例を抽出し、薬物動態関連因子と腸内細菌叢との関連性を調べる軽度の侵襲を伴う観察研究を行う予定である。 令和5年度は、ガイドラインに準拠して早期癌に対して内視鏡的粘膜下層剥離術を施行したDOAC内服患者を対象に、内視鏡治療後の消化管出血に対するDOACの薬理学的な影響に関する検討を行い、内視鏡治療後の出血には高齢であること抗凝固作用が高い症例が高リスク群であることを証明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
全国規模の多施設共同前向き研究を立ち上げ、(1)ガイドラインに準拠して早期癌に対して内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)を施行したDOAC内服患者、あるいは(2)大腸ポリープに対するEMRを施行したDOC内服患者を対象に、内視鏡治療後の消化管出血に対するDOACの薬理学的な影響に関する検討を行っている。それぞれの臨床研究に全国15施設以上が本研究に参加し、目標症例数に達して解析を行なっている。ESD研究は論文も学術誌に掲載され、現在はEMR研究につきDOACの血中濃度、DOACの代謝に関連する遺伝子多型の測定、抗Xa活性などの測定の測定を行い、今後は解析作業を行う段階になっている。
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今後の研究の推進方策 |
全国規模の多施設共同前向き研究として十二指腸Vater乳頭切開術における検討を行なっており、次年度は残りの集積を行う予定である。前研究と同様に集積後はDOACの血中濃度、DOACの代謝に関連する遺伝子多型の測定、抗Xa活性などの測定の測定を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
論文の英文校正と出版費用での使用を計画していたものが年度末に間に合わなかったために、年度が新たになった段階で執行する予定であり、他のものについては概ね計画通りである。
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