研究課題
肝細胞癌(肝癌)根治療法後に再発予防目的で免疫チェックポイント阻害剤(ICI)が投与された例を用い、根治療法後の血中のcirculating tumor DNA(ctDNA)が腫瘍再発の予測因子となりうるかを検討した。ICIをアジュバントで投与された31例を用いた。根治術後血漿よりCAPP-sequenceにてctDNAを検討し、valiantが10 copy/ml以上をminimum residual disease (MRD)陽性とした。さらに、根治術時の腫瘍免疫状態(tumor microenvironment: TME)を解析するため、免疫染色にて腫瘍のCD8、PD-1、PD-L1、Foxp3、β-catenin、glutamine synthetase (GS)陽性細胞を検討した。加えて、Tumor Mutation Load Assayにて肝癌のゲノム解析を行い、遺伝子変異は10 copy以上のvaliant出現を陽性、copy number gain (CNG)は3 copy以上を陽性とした。β-cateninとGSの染色結果より2群(β-catenin経路活性化、非活性化)、TMEの状態により4群(CD8、PD-1、PD-L1とFoxp3染色により、hot型、exhausted型、cold型、Treg型)に分類した。ICI投与による術後無再発生存期間(RFS)はβ-catenin経路非活性化群で活性化群より有意に長く、またhot/exhausted型はcold/Treg型に比較して有意に長かった。β-catenin経路関連遺伝子のCNG陰性例では陽性例と比較し、有意にRFSが延長していた。一方、MRD陰性例は陽性例に比較してRFSが長い傾向にあったが有意ではなかった。MRDの肝癌根治療法後に再発に対する効果の解析にはさらなる検討が必要である。
2: おおむね順調に進展している
本研究計画では、肝癌根治術後のアジュバント療法としての免疫チェックポイント阻害剤を使用中に腫瘍が再発した例での遺伝子変異の特徴、チロシンキナーゼ阻害剤による腫瘍反応後に再増悪を来した例の遺伝子変異の特徴を、血中circulating tumor DNA(ctDNA)を用いて解析することを目的としており、アジュバント療法としての免疫チェックポイント阻害剤使用例の術後血漿からのctDNAの解析を行なっており、概ね順調の進展していると言える。ctDNA陽性例が少なく、また再発が現在までのところ限られており、ctDNAの加えて腫瘍組織の遺伝子変異も検索し、β-catenin経路関連遺伝子のCNGが術後アジュバント療法としての免疫チェックポイント阻害剤施行中の再発と関連することを見出している。一方、MRD陰性例は陽性例に比較してRFSが長い傾向にあったが有意ではななく、より長期間のフォローによりイベント数が増えてから再解析する必要がある。
ctDNA陽性例が少なく、また再発が現在までのところ限られており、ctDNAの加えて腫瘍組織の遺伝子変異も検索し、β-catenin経路関連遺伝子のCNGが術後アジュバント療法としての免疫チェックポイント阻害剤施行中の再発と関連することを見出している。一方、MRD陰性例は陽性例に比較して術後無再発生存期間が長い傾向にあったが有意ではななく、より長期間のフォローによりイベント数が増えてから再解析する必要がある。また、研究計画に基づき、チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)における耐性変異クローンを同定する目的で、TKI投与により、腫瘍縮小が得られた症例中、治療前に手術あるいは腫瘍生検によるパラフィン包埋組織が利用可能な例を対象として、治療前の腫瘍組織の遺伝子異常をOncomine Tumor Mutation Load Assay、治療開始後、及び腫瘍の再増悪時のcfDNA の遺伝子変異をAVENIO ctDNA Surveillance panel にて解析する。腫瘍の再増悪時に出現・コピー数が増加する変異の内、症例間で共通する変化を耐性変異候補とする検討を開始する。
残高の費用はRNA発現解析費用として支出予定のものある。既にRNAは抽出されており、現時点でまだ使用予定のTaqMan ポリメラーゼ、リアルタイムPCR用試薬の入荷が遅れていたため次年度使用額が生じた。RNA発現解析のための支出は翌年度分研究計画の上半期に予定されており、計画している肝癌の分子生物学的解析の一部として、癌関連経路活性化、腫瘍免疫状態の分類の基礎データとするために用いる予定としている。
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