研究課題/領域番号 |
21K07959
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
石川 哲也 名古屋大学, 医学系研究科(保健), 教授 (10288508)
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研究分担者 |
林 由美 名古屋大学, 医学系研究科(保健), 講師 (30632707)
伊藤 弘康 藤田医科大学, 医学部, 教授 (80373075)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 肝細胞移植 / 持続性肝不全 / 脂肪由来幹細胞 / 細胞老化 |
研究実績の概要 |
HSVtk-GCMモデルへの同系(auto)及び異系(allo)肝細胞移植による肝再生及び免疫拒絶についての検討を行った。Auto肝細胞移植後、回復時の肝臓はドナー肝細胞とレシピエント肝細胞とのキメラとなるが、キメラ率(ドナー肝細胞比率)は約20~74%とかなりの幅がある。すなわち肝細胞移植により生じた何らかの生存・増殖シグナルが障害を受けたレシピエント肝細胞にも有効に作用したていると考えられた。肝細胞移植を行わないマウスでは、核の膨化を伴う肝細胞の膨化を認め、肝内のp16 mRNA発現の上昇を伴うなど、細胞老化の状態にあると考えられた。Auto肝細胞移植では、移植後2週前後で一過性のALT上昇、肝内への炎症細胞浸潤、肝内TNF-a、IL-1b、MCP-1などの炎症性サイトカイン/ケモカインの発現上昇を経た後に正常肝構造への回復に向かい、それに伴い肝細胞形態の正常化など、細胞老化の状態は解消されていた。発現上昇のみられたサイトカイン/ケモカインは、いずれもNFkBシグナル経路の下流に位置している。これは、移植肝細胞あるいは浸潤した炎症細胞と障害肝の構成細胞との間の接触(Notchシグナル経路など)がこの現象に関与した可能性を示唆していると考えている。Allo移植時の免疫拒絶回避にはFK506投与が有効であったが、肝内の炎症軽減には脂肪由来幹細胞(ASC)投与が有効に作用し、肝内p16発現の低下などより細胞老化の状態をすることが示唆された。ASCについては肝内への生着は見られないことから、その作用には、やはりASCと肝構成細胞との間の接触シグナルが関与している可能性が考えられた。All肝細胞移植時の免疫拒絶回避と肝障害の軽減に向けてはFK506とASCの併用が有効である可能性が示唆された。
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