研究課題/領域番号 |
21K07961
|
研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
石原 俊治 島根大学, 学術研究院医学・看護学系, 教授 (80263531)
|
研究分担者 |
三島 義之 島根大学, 学術研究院医学・看護学系, 助教 (30397864)
岡 明彦 島根大学, 学術研究院医学・看護学系, 助教 (80600600)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 腸管粘膜透過性 / クローン病 / 制御性B細胞 / 制御性T細胞 / IL-10 |
研究実績の概要 |
これまで私共は、クローン病(CD)では、制御性B細胞(Breg)の機能が減弱していること、dysbiosis環境下では組織の細胞外アデノシン三リン酸(ATP)がBregの機能を低下させることを明らかにした。一方、腸管粘膜透過性は多彩なメカニズムによって担われているが、Bregによる透過性制御に関する報告はない。私共は、「CDでは、Bregの異常が腸管粘膜透過性の制御機能を低下させ、腸管炎症増悪に関与する」という仮説を検証する。本研究の成果は、CDの病態と“leaky gut syndrome”の病態解明につながる可能性があり、これまでと異なる視点からの診断法や治療法の開発に貢献できると考える。 本申請課題では、これまでのBregに関する研究成果を踏まえて、「IL-10産生の低下が認められるCD患者では、その機能異常によって腸管粘膜透過性の制御機能が低下し、結果的に不可逆的な慢性炎症が誘導されること」を明らかにする。遺伝子操作マウスおよび免疫不全マウスであるRAG2-KOを用いたin vivoでの腸炎モデルの実験系、さらにin vitroにおいては、腸管上皮と免疫細胞の共培養系を樹立し、Bregの機能低下によって上皮の粘膜透過性が低下することを目的として研究を進めている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1. マウスモデルを用いた実験系 免疫不全マウスであるRag2-KOマウスを検討に用いた。本年度は、まずwholeのT細胞とB細胞を移入するモデルを作成して、2つのリンパ球サブセットによる腸管粘膜透過性の違いを評価した。C57BL/6マウスの腸間膜リンパ節(MLN)から分離したT、B細胞を調整し、Rag2-KOマウスの尾静脈から投与し、投与後4週間後に粘膜透過性評価(FITCデキストラン法)した。現在までの検討ではwhole T細胞とwhole B細胞ではむしろT細胞による透過性制御の関与が推測される結果となっていた。しかし、TregあるいはBregの詳細なサブセットを用いた検討が今後は必要である。 2. In vitroモデルによる評価 In vitroにおける腸管透過性制御モデルは、transwellのapical側にCaco-2とHT-29細胞を培養し、basolateral側のRaji細胞との共培養の有無によって透過性評価モデルを作成した。透過性は上皮間電気抵抗によって測定した。Raji細胞は単球由来の細胞株であり、種々の炎症性サイトカインを産生するが、今回の検討で共培養によって透過性低下を確認した。今後は制御性細胞、制御性サイトカインの影響を評価する必要があると考える。
|
今後の研究の推進方策 |
2021年度に引き続き、マウスモデルとin vitroモデルによる実験を継続していく。 1. マウスモデルを用いた実験系 2021年度の実験で、Rag2-KOマウスにリンパ球を移入して腸管粘膜透過性を評価するモデルは樹立できているので、2022年度は、制御性の免疫担当細胞、特にTregとBregの関与を検討していく。現在、私共はIL-10-KOマウスを飼育しており、実験に使用可能な状況である。IL-10-KOマウスの脾臓から分離したT細胞やB細胞はIL-10に依存した免疫抑制機能を失っていることから、本マウスのT細胞やB細胞のRag2-KOマウスへの移入系を用いて、制御性リンパ球サブセットと腸管粘膜透過性の関連を明らかとする。 2. In vitroモデルによる評価 In vitroにおける腸管透過性制御モデルは、transwellのapical側にCaco-2とHT-29細胞を培養し、basolateral側にリンパ球を共培養する系を用いていく。2022年度は、野生型、IL-10-KOマウスから分離したT細胞とB細胞、ヒトCD患者および健常人から分離したT細胞とB細胞を、各々Caco-2とHT-29細胞と共培養し、上皮細胞の透過性亢進に与える影響を検証する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2021年度も継続して、マウスモデルを用いた実験系、in vitroの共培養系を樹立し、概ね計画通りに研究は遂行してきた。予算も概ね予定通りの使用となったが、マウスや一部の試薬などは、他の実験者と共有できることもあり、190845円が残となった。 2022年度も、継続してマウスモデルとin vitroの共培養系を用いた研究を遂行していくので、2021年度の残予算は実験動物、分子生物学的試薬などに充てて、さらに詳細に研究を進めていく。
|