研究課題
食道扁平上皮癌(ESCC)は飲酒や喫煙が主なリスク因子であるが、女性で非飲酒・非喫煙者でも発症することがある。これまでの研究では、飲酒・喫煙の他に男性や遺伝子多型、まだら食道がリスクとされてきたが、そのメカニズムは不明である。このため本研究では非飲酒・非喫煙女性のESCCの臨床病理学的特徴と遺伝学的特徴を明らかにすることを目的とした。対象は女性のESCCの884症例1198病変を対象としてNDNS群(非飲酒非喫煙)とDS群(飲酒喫煙)に分け、臨床病理学的特徴と遺伝学的特徴を比較した。またがんゲノム解析を行い、遺伝子変異を同定し、病的バリアントを検証した。結果としてはNDNS群は高齢でBMIが高く低身長であり、ESCCの既往歴や逆流性食道炎の割合が低かった。遺伝学的には、CDKN2A alterationsが多く、KMT2D alterationsが少なかった。CDKN2A aleterationではdeletionは2群間で差を認めなかったが,NDNS群のみmutationを認められた。KMT2Dの体細胞変異はナンセンス変異をDS群で70%(7/10)認めたが,NDNS群では認めず,mutationの位置も1023以降ですべてのDNAドメインの不活性化を示していた。CDKN2AはNDNS群のみmutationが認められ,位置からDNA結合ドメインのAnk_2の不活性が起こることが示唆された。これらの遺伝子に関連するタンパクに対して免疫染色(IHC)を施行したところ、KMT2D陽性の割合が低く、p16陽性の割合が高かった。さらにKMT2D alterationsとKMT2-IHCはkappa値0.8924で高い相関を認めた。一方でDKN2A aleterationとp16-IHC陽性はカッパー値0.1524と相関は認めなかった。また結論としては非飲酒・非喫煙の女性で逆流性食道炎を持つ高齢者は、まだら食道がなくてもESCCが発生することがあり、そのゲノム景観はCDKN2A alterationsが多く、KMT2D alterationsが少ないことが示唆された。
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Cancer Medicine
巻: 13 ページ: e7078
10.1002/cam4.7078