Multi-Target Agent(MTA)である分子標的治療薬ソラフェニブ、レンバチニブが進行肝癌治療のkey drugとして広く用いられているが、ソラフェニブ耐性後のレンバチニブの成績は不明であり、効果を予測するバイオマーカーの開発が求められている。本研究では、研究代表者がこれまでに樹立したソラフェニブ耐性株と親株を用いてプロテインアレイを行い、レンバチニブ関連シグナルのリン酸化を解析することでソラフェニブ耐性後のバイオマーカーとなりうる因子を明らかにし、実臨床での100例の肝癌患者の検体を用いてレンバチニブの有効性との関連を解析することを目的としている。研究代表者はこれまでに、ソラフェニブ耐性株では、レンバチニブの重要な標的遺伝子であるFGFRの主要な下流分子であるFRS2のリン酸化が親株と比較して有意に低いことを見出しており、FRS2が有用なバイオマーカーとなりうる可能性が極めて高い。令和5年度では50例程度の患者検体を集積した。現在約100例程度の症例を集積しており解析中である。レンバチニブの治療効果に客観的奏効率や病勢制御率等の結果にFRS2が影響している可能性が示唆されたが、Progression free survivalやOverall survival等の結果の解析には観察期間が必要である。さらに近年の切除不能肝細胞癌の薬物療法においてはアテゾリズマブ・ベバシズマブ併用療法やデュルバルマブ+トレメリムマブ併用療法の有効性が報告されており、免疫チェックポイント阻害剤が主に用いられている。従って、今後はFRS2と免疫チェックポイント阻害剤との関連を追加解析することが実臨床の治療戦略に大きく寄与する可能性がある。
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