研究課題
膵癌は早期診断・治療による予後改善が急務とされているが、超音波内視鏡下吸引穿刺生検(EUS-FNA)は膵癌診断において重要な役割を担っている。本研究では、以下のEUS-FNA検体を用いた次世代診断技術を開発することを目的とした。A.膵腫瘍性病変に対するAIを用いた迅速細胞診(AI-ROSE)の開発EUS-FNA時における迅速細胞診(ROSE)の有用性はこれまで多数報告されているが、細胞診技師や病理医の不足のため実臨床では導入が難しいのが現状である。そこで、人工知能(AI)によるROSEの開発を行った。令和5年度は、令和3、4年度に集積した画像を用いてAIに学習させ、開発したAI-ROSEを用いて検証を行った。その結果、Test cohortでは、悪性度を3群に分けた場合および2群に分けた場合のAI-ROSEの正診率は0.898および0.951と非常に良好な結果が得られた。またComparison cohortでは、AI-ROSEの膵腫瘍に対する良悪性診断の正診率(93.3%)は、内視鏡医の正診率(68.3%)を有意に上回っていることが判明し、AI-ROSEの診断に要した時間(6.04秒)は内視鏡医(1,800秒)と比較して有意に短いことが証明された。これらの結果をDDW2023およびAPDW2023で報告し、論文を投稿予定である。B. 膵癌のEUS-FNA検体における包括的1細胞遺伝子解析法の開発化学療法を予定している膵癌24例に対してRNAシークエンスを用いて網羅的な遺伝子解析を行ったところ全検体で遺伝子解析は可能であった。また、化学療法(Gemcitabine plus Nab-paclitaxel)の奏功の有無で2群に分けて評価したところ、Gemcitabineの耐性に関与するRNA遺伝子(PVT1、HIF1A-AS1、SH3BP5-AS1)の発現量と化学療法の奏功には相関性が認められなかった。次の研究として、化学療法が奏功しなくなった段階で、治療開始時と比較し遺伝子発現にどのような変化があるかを検討し、さらに包括的1細胞遺伝子解析の有用性を検討する予定である。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 2件、 招待講演 4件)
Pancreatology
巻: 24 ページ: 78~87
10.1016/j.pan.2023.11.012