研究課題
申請者はこれまでに、β-cateninと結合するコアクチベーターがCBPからp300にスイッチすることで、標的遺伝子が切り替わることを示した。そこで本研究ではさらに発展させ、(1)上皮幹細胞及び分化過程における、β-cateninコアクチベーターの切り替えの解析、(2)β-cateninコアクチベーター切り替えを誘導するタンパク質間相互作用阻害剤のスクリーニングと、その標的分子同定、そして(3)阻害剤の組織修復、癌幹細胞増殖への作用を明らかにすることで、消化管上皮幹細胞及び分化過程における異なるβ-catenin複合体の役割を明らかにすることを目標に研究を行った。初年度、申請者はβ-cateninとコアクチベーターp300の複合体が核内に観察される細胞集積が、小腸上皮陰窩底部に認められることを明らかにした。昨年度は、化合物スクリーニングの指標細胞の選定を行った。当初、β-cateninとp300及びCBPのゲノム 上での結合領域の解析に用いた膵癌細胞株PANC-1を用いる予定であったが、β-cateninの誘導剤CHIR-99021やβ-cateninとCBPの結合阻害剤ICG-001を作用させた時の、分化状態に変化が無く、幹細胞能と分化応答の切り替えを制御する化合物のスクリーニングには適さないことがわかった。そこで、他の細胞株を検討した結果、腎癌細胞株Caki-1がCHIR-99021に応答して、近位尿細管分化マーカーであるL T Lレクチンの染色性を示すことを見出した。最終年度は、Caki-1細胞を用いて、化合物のスクリーニングを実施した。その結果、Caki-1細胞に対して分化能を示す化合物を複数得ることができた。これらの中にβ-cateninのコアクチベーターの選択制に関わる化合物が含まれることが期待される。
すべて 2024 2023
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件)
Biochemical and Biophysical Research Communications
巻: 695 ページ: 149394~149394
10.1016/j.bbrc.2023.149394