研究課題/領域番号 |
21K07975
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
池上 恒雄 東京大学, 医科学研究所, 准教授 (80396712)
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研究分担者 |
古川 洋一 東京大学, 医科学研究所, 教授 (20272560)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 肝内胆管癌 / IDH変異 |
研究実績の概要 |
ヒト肝内胆管癌で高率に認められるイソクエン酸デヒドロゲナーゼ1(IDH1)及びIDH2変異を標的とする治療法開発の基盤構築のためにはin vitro及びin vivoでの発癌メカニズムの包括的かつ詳細な理解が不可欠である。本研究では①マウス胆管オルガノイドにCRISPR/Cas9システムを用いてIDH1及びIDH2変異を導入することにより発現変動し、癌化に寄与する新規遺伝子とパスウェイを同定すること、②IDH1またはIDH2変異により、肝内胆管癌を生じるマウスモデルを樹立し、IDH1, 2変異に起因する腫瘍形成の分子病理学的特徴を解明すること、③同定した新規遺伝子やパスウェイの治療標的としての有用性を樹立したオルガノイド及びマウスモデルを用いて評価すること、を目的とする。CRISPR/Cas9システムによるIDH1,2変異の導入とともにレトロウイルスベクターを用いたIDH1,2変異の導入も並行して行った。またマウス肝内胆管オルガノイドと並行してマウス胎児線維芽細胞に対するIDH1,2変異導入も行った。マウス胎児線維芽細胞に対するIDH1,2変異の導入がまず初めに成功したため、同細胞を用いてのRNAシークエンスによる遺伝子発現プロファイル解析を行った。同時にマウス胎児線維芽細胞を2-HGで処理した発現変動する遺伝子をRNAシークエンスにより解析した。また肝特異的KRAS変異及びFBXW7変異発現マウスにIDH1,2変異を導入したマウスを作製し、肝腫瘍の発生を検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マウス胆管オルガノイドへのIDH1,2変異導入は現在進行中であるが、マウス線維芽細胞に対するIDH1,2変異導入はすでに成功しており、RNAシークエンスによるIDH1,2変異導入により発現変動する遺伝子群の同定、さらには2-HG処理により発現変動する遺伝子群のRNAシークエンスによる同定、さらにはIDH変異と2-HG処理により共通して発現変動する遺伝子の同定もできている。また、その中でがん化に重要と考えられる遺伝子の候補としてSlc2a1(Glut1)を同定しており、その発現制御にPI3K-AKT-mTORの活性化が関わっていることを見出した。また、肝特異的KRAS変異/FBXW7変異/IDH1または2変異導入マウスの作製も順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
マウス線維芽細胞でのIDH1,2変異導入により発現変動する遺伝子の解析と同様にマウス肝内胆管オルガノイドへのIDH1,2変異導入と変異導入細胞及び2-HG処理で発現変動する遺伝子の解析を進め、IDH1,2変異による肝内胆管癌発生における重要なエフェクター分子やパスウェイの同定を目指す。また、肝特異的KRAS変異/FBXW7変異/IDH1または2変異導入マウスに生じる肝腫瘍の病理組織学的検討を進めていく。またマウス線維芽細胞を用いたIDH1,2発現により誘導されたがん化に重要と考えられる遺伝子に関してマウス肝腫瘍における発現を免疫組織化学染色や組織から抽出したmRNAを用いた定量RT-PCRにより検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
オルガノイドの遺伝子発現を網羅的に解析するためのRNAシークエンスやIDH1,2変異発現肝内胆管癌マウスモデルの飼育費用の一部に使用する予定である。
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