研究課題
ヒト肝内胆管癌で高頻度に変異が認められるイソクエン酸デヒドロゲナーゼ1(IDH1)およびIDH2変異を標的とした新規治療法開発のための基盤構築を目指し、①マウス胆管オルガノイドにCRISPR/Cas9システムによるゲノム編集技術を用いてIDH1およびIDH2変異を導入し、それらの遺伝子変異により発現変動する遺伝子を網羅的に調べ、癌化に関与する新規遺伝子やパスウェイを同定すること、②IDH1および2変異による肝内胆管癌マウスモデルの樹立とフェノタイプ解析を目指した研究を行った。また、マウス胆管オルガノイドへのIDH1,2変異導入に難渋したため、それらに加えてマウス胎児線維芽細胞にIDH1,2変異をレトロウイルスベクターを用いて導入し、それにより発現変動する遺伝子の網羅的解析をRNAシークエンスにより行った。その結果IDH1,2変異の導入により、グルコーストランスポーターの1つであるGlut1をコードするSlc2a1遺伝子の発現が上昇することがわかった。さらにIDH1,2変異によるSlc21aの発現上昇はPI3K-AKT-mTOR-HIF1alpha経路を介することが明らかとなった。また、IDH1変異およびIDH2変異を肝臓特異的に導入したマウスに肝内胆管癌を含む肝腫瘍は生じなかったが、Kras変異と同時に導入したところ肝細胞癌や肝内胆管癌を生じた。なお、IDH2変異とKras変異を共発現させたほうがIDH1変異とKras変異を共発現させた場合よりも肝内胆管癌の発生頻度が高かった。また、IDH1またはIDH2変異とKras変異を共導入し、さらにFbxw7変異を加えたマウスでは高率に肝内胆管癌を生じた。
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Cancer Science
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Oncology Letters
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