研究課題
本計画では、小腸発生段階における間質上皮crosstalkを解明をするために、まず、マウスの胎児期E14,5および成体期マウスの小腸より、間質初代培養細胞を採取した。培養液を、血清非添加培地に交換後、RNAを回収しRNAseqによる網羅的な発現解析を行った。上皮細胞とのcrosstalkに影響している遺伝子を探しだすため、細胞膜表面ないし分泌されるものに着目して解析を進めた。臓器の形態形成に影響すると知られている、Wnt、Notch、BMP/Tgf、EGF、FGF、HGF、HedgeHogシグナルに関与し、胎児期と成体期において発現量に差があることを確認した。特に、Wntシグナル、Notchシグナルにおいて、発現量が変動しているものが多く観察した。さらにRNAseqにおける個別のread数(発現量)を解析したところ、NotchリガンドであるDlk1が胎児期でのread数が多い一方、成体期においては少ないことから、機能的な差をもたらしていると考えその解析対象とした。実際に、qPCRとウェスタンブロットにて、胎児期から成体にかけて時系列で、小腸における発現量を解析したところ出生後に急激に発現が消失していることが確認できた。また、胎児期の小腸間質に由来するWntシグナルを解析するため、293細胞に、Wntルシフェラーゼレポーターを安定発現させ、胎児期および成体期の間質細胞と共培養する実験系を確立した。結果は、胎児由来の間質シグナルの方が、成体由来に比べ著名に亢進していることが分かった。今後は、胎児由来の小腸オルガノイドを採取培養し、胎児および成体由来の小腸間質細胞と共培養することで、小腸粘膜の分化成熟に与える影響を解析する予定である。
2: おおむね順調に進展している
胎児期E14,5および成体期マウスの小腸より、間質初代培養細胞を採取することに成功し、培養液を、血清非添加培地に交換後、RNAを回収しRNAseqによる網羅的な発現解析行うことで、小腸発生段階における間質上皮crosstalkを解明をするために鍵となる、シグナル経路を絞りこむことに成功した。そして、RNAseqの解析結果より着目したDLK1の発現量は、qPCRやウェスタンブロットで、より経時的に観察し、胎児と成体で大きな差があることも確認できた。また、Wntシグナルについてもレポーターアッセイにて、同じく胎児と成体で大きな差があることが確認できており、学会発表も行えおり計画はおおむね順調である。
小腸発生段階における間質上皮crosstalkを解明をするため着目するシグナルおよび遺伝子を絞り込むことに成功した。今後は、小腸オルガノイドと間質の共培養を使い、in vitroにて幹細胞、分化細胞に、間質の成熟段階がどのように影響するかを検証する。具体的には、共培養系からRNAを抽出しqPCRにて、Atoh1、ALPi、ChaA、Lyz、Muc2などの腸上皮分化マーカーの発現が、共培養することでどのように変化するか解析する、これにより、胎児由来の間質シグナルが、腸上皮の成熟を促しているのか阻害しているのか、明らかにできる。続いて、成体期における小腸上皮の幹細胞であるLgr5陽性細胞からGFPが発現しているLgr5-EGFP-IRES-CreERT2マウスを使用し、胎児小腸オルガノイドを採取し、LGR5陽性小腸幹細胞の変化を観察する。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件)
Am J Physiol Gastrointest Liver Physiol
巻: 320(4) ページ: 506-520
10.1152/ajpgi.00445.2020.