研究課題
研究者らはこれまで行ってきた慢性肝炎における肝内免疫動態や肝癌ゲノムの解析に基づく知見および、独自に樹立したiPS細胞由来の新規肝細胞培養系を用いた免疫シグナルや遺伝子機能解析から得られた結果を発展的に統合し、肝癌微小環境における癌細胞と免疫細胞の相互作用機構および薬物反応機序を明らかにすることを目標として今年度の研究を行い、下記の成果を得た。(1)患者生検検体由来肝癌オルガノイドの樹立:ヒトiPS-Hepオルガノイドの3D培養系を開発し、多数の肝細胞関連遺伝子発現が長期の継代培養を経ても保たれることを確認した。また肝癌手術時の肝切除検体の背景肝からの疾患オルガノイド構築に着手し、肝切除検体非癌部からのsingle cell化に成功した。(2)ICIを含む全身化学療法の治療反応性を規定する分子機構の解明:ICIであるアテゾリズマブ+ベバシズマブ(ATZ+BV)併用療法を行ったHCC患者213名の解析により、ベースラインのCRP高値が腫瘍の進行およびATZ+BV抵抗性に関連することを見出し、論文発表した(Hepatology Research.2023 Dec 22)。更にこの結果に基づいて、炎症性サイトカインの網羅的解析や、肝癌オルガノイドと星細胞の共培養系による肝微小環境の解析に着手した。(3)全身化学療法中の肝癌ゲノム/免疫プロファイルの経時的変化の解析:肝癌治療反応性に関わる免疫要因の同定を目指し、ICI治療前後でのリンパ球プロファイルの比較や腫瘍縮小との関連を解析した。経カテーテル肝動脈化学塞栓療法(TACE)後の変化として報告したCD14高発現単球に占めるCXCR1陽性単球(免疫制御性単球)の増加(Cell Reports.2023 Mar 28;42(3):112165)は奏功例であってもICI投与後には見られず、他の免疫動態について解析を継続している。
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