免疫チェックポイント阻害剤の高い有効性からも、元来生体には免疫系によって腫瘍を排除する機構が備わっていることが示唆される。その一方で腫瘍ニッチにおいては様々な免疫回避機構が存在しており、本機構の解明はより有効な癌免疫療法開発のための鍵であると言える。小腸癌は大腸癌よりもはるかに少ないことが知られているがその理由は不明である。腸管上皮はターンオーバーの早い細胞であり、一定の頻度で細胞レベルの腫瘍化が発生する一方で、免疫細胞がこれを排除していると考えられている。我々は上皮に最も近接し、頻回にコンタクトし、高い細胞障害活性を有する分画を豊富に含むIntraepithelial lymphocytes; IELが上皮細胞を監視し、細胞間接触を介して悪性腫瘍の発生を抑制しているため、小腸には腫瘍が少ないという仮説を立てた。本研究において、我々は新たに開発した小腸腫瘍内における IEL動態のin vivo live-imagingおよびIELと腸管腫瘍オルガノイドの供培養システムを用いることによって、腸管腫瘍ニッチにおけるIELの動態とIEL-上皮細胞間相互作用を可視化するとともに、IEL-上皮細胞間接触が腸管腫瘍免疫に果たす役割を検証する。 本研究期間において、5)腫瘍オルガノイド-IEL供培養系のin vitro live-imaging。6)腫瘍オルガノイド-IEL免疫応答における細胞間接触の重要性の検討を行った。5)においては腫瘍オルガノイドに対して正常IELによる免疫応答を体外で再現可能であった。6)においては細胞間接触を阻害することにより抗腫瘍免疫応答がキャンセルされた。また同モデルを用いて、抗腫瘍免疫において中心的な役割を担うIEL分画の同定と、細胞間接触の促進を介して抗腫瘍免疫の増強効果のある薬剤スクリーニングを行った。
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