最終年度は、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体アルファ (PPARα) アゴニストによる腸内脂肪酸吸収抑制作用に着目し、非アルコール性脂肪性肝炎 (NASH) モデルラットにおけるPPARαアゴニストの肝線維症に対する効果を調べた。 NASH誘発のためにSprague-Dawleyラットに高脂肪コレステロール食を与え、Pemafibrate治療群 (Pemafibrate(+)) と未治療群 (Pemafibrate(-)) の2群に分けた。両者の小腸の脂質沈着と脂質代謝関連遺伝子の発現、および肝組織の線維化とα-SMA発現レベル、肝星細胞活性化マーカーを評価した。 その結果、Pemafibrate(+)群では、Pemafibrate(-)群と比較して、腸管内の中性脂肪沈着と脂質吸収が著明に減少した。また、microsomal triglyceride transfer protein (MTP)やCD36をはじめとする脂質調節関連分子の発現が有意に抑制された。肝組織においてもPemafibrate(+)群では、Pemafibrate(-)群と比較して、肝線維化の改善と線維化関連分子・肝星細胞活性化因子のmRNA発現低下が認められた。研究期間全体を通し、腸管MTP単独抑制ではなく、PPARαアゴニストによる複数の腸管脂質代謝関連分子の下方制御は、NASHモデルラットの腸管における脂肪滴形成と脂質吸収を減少させ、肝線維症を軽減した。本研究の結果、PPARαアゴニストはNASHの新たな治療ターゲットとなる可能性が示唆された。
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