研究課題
NAFLD由来HCC患者の腫瘍生検検体を用いて鉄沈着及び鉄定量の評価を行い、NAFLD由来HCC症例では鉄沈着及び鉄定量が上昇し、また鉄沈着のパターンはReticuloendothelial system (RES)/mixed typeが多いことを示した。MRIのR2*マップを用いた鉄沈着の非侵襲的評価により、R2*値がNAFLD由来HCC患者では上昇していることを示した。NAFLD患者及びNAFLD由来HCC患者における治療前後の肝生検及びR2*マップを行うことにより、生検での病態とR2*値の変化が一致することが判明した。一方、血清フェリチン値はR2*値と比較してその相関が弱かった。即ち、生検にて病態が増悪した場合にはR2*値が上昇し、病態が改善した場合にはR2*値が改善することが判明した。上記より、肝内の鉄沈着はNAFLDやNAFLD由来HCCの病態と関連し、またMRI- R2*が非侵襲的に肝内鉄沈着を反映し、かつ病態変化と相関する可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
研究計画書では、2021年度の目標として、(1) 前向き研究として、100名のNAFLD患者における肝生検検体及び50名のNAFLD由来HCC患者の腫瘍生検検体を用いて鉄沈着の評価を行うことで、NAFLD病態及びNAFLD由来HCC病態に鉄沈着が関与するかを検討する。鉄定量は原子吸光度計を用いて濃度測定を行い、また鉄染色に関してはベルリンブルー染色を行うことでNAFLD肝病態と鉄定量及び鉄染色との関係を評価する。(2) NAFLD患者及びNAFLD由来HCC患者におけるMRI-R2*マップの評価を行い、得られた値とHIC及び鉄染色の結果を比較することで非侵襲的肝内鉄沈着評価におけるR2*マップの有用性を評価する。また、R2*マップにより得られた値と肝病理所見を比較検討することでR2*マップが肝病理における非侵襲的診断法として有用であるかを検討する。2022年度の目標として、(3)NAFLD患者及びNAFLD由来HCC患者における治療前後の鉄沈着及びR2*マップによる評価を行う。(4)NAFLD及びNAFLD由来HCC患者における治療前後で肝生検を行う症例について、HIC及びR2*マップを行いその変化量と炎症や肝細胞風船様膨化の変化量の評価を行うことでHIC及びR2*マップが治療効果判定として用いることが可能かを評価する。上記を目標としている。概ね、計画と一致している。
NASHモデルマウス及びHCC発症モデルマウスに対して鉄過剰食及び鉄制限食を投与することによる病態進展への鉄の影響を検討する予定である。高脂肪高果糖高コレステロール食負荷マウスでは著明な炎症や肝細胞風船様膨化及び線維化を伴うNAFLD、即ち、顕著なNASHを来すため、NASHモデルとして頻用されている。このNASHモデル及びdiethylnitrosamine(DEN)を加えたNASH由来HCCモデルマウスに鉄過剰食及び鉄制限食を投与することで鉄過剰状態及び鉄欠乏状態を作成し、鉄がNAFLD及びNASH由来HCC病態へどのように影響するかを検討する。さらに、鉄過剰食負荷マウスへ鉄キレート剤を投与することで、過剰鉄による影響をキャンセルし、病態が改善するかを検討する。さらにDEN投与によるHCCモデルマウスの作成も安定して行うことが可能である。
昨年度の試薬代が予定より安価で済みました。本年度、動物モデル実験で多くの試薬を購入する予定です。よろしくお願いいたします。
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