研究課題/領域番号 |
21K07987
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
今城 健人 横浜市立大学, 医学研究科, 客員研究員 (30600192)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 非アルコール性脂肪肝炎由来肝細胞癌 |
研究実績の概要 |
非アルコール性脂肪肝疾患(nonalcoholic fatty liver disease; NAFLD)由来肝細胞癌(hepatocellular carcinoma; HCC)患者の腫瘍生検検体を用いて鉄沈着及び鉄定量の評価を行い、NAFLD由来HCC症例では鉄沈着及び鉄定量が上昇し、また鉄沈着のパターンはReticuloendothelial system (RES)/mixed typeが多いことを示した。MRIのR2*マップを用いた鉄沈着の非侵襲的評価により、R2*値がNAFLD由来HCC患者では上昇していることを示した。NAFLD患者及びNAFLD由来HCC患者における治療前後の肝生検及びR2*マップを行うことにより、生検での病態とR2*値の変化が一致することが判明した。一方、血清フェリチン値はR2*値と比較してその相関が弱かった。即ち、生検にて病態が増悪した場合にはR2*値が上昇し、病態が改善した場合にはR2*値が改善することが判明した。上記より、肝内の鉄沈着はNAFLDやNAFLD由来HCCの病態と関連し、またMRI- R2*が非侵襲的に肝内鉄沈着を反映し、かつ病態変化と相関する可能性が示唆された。さらに、高脂肪高果糖高コレステロール食負荷NASHモデルマウスへの鉄過剰及び鉄制限食を投与し、鉄過剰がNASH病態を増悪、鉄制限がNASH病態を軽減させることを示した。さらに、近年ではマルチパラメトリックMRIを用いてさらにNAFLDにおける鉄の影響を評価可能となっている。本研究により、鉄代謝への介入がNASH及びNASHからの発がんに寄与でき、新規治療法となりうる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画書では、2022年度の目標として、臨床3) NAFLD患者及びNAFLD由来HCC患者における治療前後の鉄沈着及びR2*マップによる評価;NAFLD及びNAFLD由来HCC患者における治療前後で肝生検を行う症例について、HIC及びR2*マップを行いその変化量と炎症や肝細胞風船様膨化の変化量の評価を行うことでHIC及びR2*マップが治療効果判定として用いることが可能かを評価する。また、NAFLD由来HCC患者における治療前後でのHIC及びR2*値の変化も検討する。 上記を目標としたが、高脂肪高果糖高コレステロール食負荷NASHモデルマウスへの鉄過剰及び鉄制限食モデルによる検討が遅れていたが、現在は順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度の目標として、 基礎1) NASHモデルマウス及びHCC発症モデルマウスに対して鉄過剰食及び鉄制限食を投与することによる病態進展への鉄の影響を検討; 高脂肪高果糖高コレステロール食負荷マウスでは著明な炎症や肝細胞風船様膨化及び線維化を伴うNAFLD、即ち、顕著なNASHを来すため、NASHモデルとして頻用されている。このNASHモデル及びdiethylnitrosamine(DEN)を加えたNASH由来HCCモデルマウスに鉄過剰食及び鉄制限食を投与することで鉄過剰状態及び鉄欠乏状態を作成し、鉄がNAFLD及びNASH由来HCC病態へどのように影響するかを検討しており、鉄過剰がHCCを増大させる可能性が示唆された。さらに、鉄過剰食負荷マウスへ鉄キレート剤を投与することで、過剰鉄による影響をキャンセルし、病態が改善することも確認できている。 NASHモデルにDENを加えたNASH-HCC発症モデルマウスを安定して作成できるようになり、鉄過剰食及び鉄制限食を投与実験並びに鉄過剰食負荷マウスへ鉄キレート剤投与による過剰鉄による影響をキャンセルする実験を進めている。 おおむね順調に進んでいる。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由:前述のように、鉄過剰状態がNASH由来HCC病態進展に重要と考えており、この裏取りをしていく必要がある。しかしながら、鉄キレート実験による検討がまだ途中であり、本検討を次年度に行っていく予定である。 本結果を日本のみならず海外で発表を行っていく予定であり、旅費にも使用させていただく。使用計画:NASHモデルにDENを投与したHCCモデルの作成及び鉄キレート実験へ費用を使用させていただきたい。上記を国際学会(アメリカ:AASLD、ヨーロッパ:EASL)で発表していく。
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