研究課題/領域番号 |
21K07989
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
榎本 大 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 准教授 (20423874)
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研究分担者 |
LE THITHANHTHUY 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 特任講師 (10572175)
河田 則文 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 教授 (30271191)
田守 昭博 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 准教授 (30291595)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | B型肝炎 / 抗ウイルス治療 / 核酸アナログ / インターフェロン / 免疫チェックポイント |
研究実績の概要 |
B型慢性肝炎治療中の血中可溶性免疫チェックポイント分子の変化と治療効果の関係につき検討した。対象はPeg-IFN単独治療を行った12例とエンテカビルまたはテノホビルで治療を行った20例である。治療開始0, 12, 48週目の血漿中の可溶性免疫チェックポイント関連16分子をmultiplex immunoassaysを用いて測定した。 結果として、1) Peg-IFN治療群はNUC治療群より有意に若かったが(P=0.0009)、性別、肝機能、HBVマーカー、肝組織には差異を認めなかった。sPD-1, sCTLA-4, sCD28はじめ7種の因子については、Peg-IFN治療中に変化を認めなかった一方で、NUC治療中には有意に低下した。sLAG-3はPeg-IFN治療中に有意に上昇、sGITRLは有意に低下した一方で、NUC治療にはいずれも変化を示さなかった。sTIM-3、sCD86、sCD40はいずれの治療でも有意な変化を示したが、NUC治療ではいずれも低下したのに対し、Peg-IFN治療ではsCD40のみ低下、他は上昇した。2)治療有効例はPeg-IFN群では7例(58%)、NUC群では6例(30%)であった。Peg-IFN群では有効例より無効例において12週目のsCD86の上昇率が有意に高かった(P=0.048)。NUC治療群では有効例において、有意に治療前HBs抗原が高く(P=0.035)、HBV DNAが高く(P=0.028)、genotype Cが少なかった(P=0.015)が、免疫因子の変化にはすべて有意差を認めなかった。 結論として1) B型慢性肝炎においてPeg-IFNとNUCとでは、治療中の血漿中の可溶性免疫チェックポイント分子の変化に差異が見られた。2)血漿中のsCD86の変化は、Peg-IFNの治療効果を反映するバイオマーカーになりうることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の計画として、既存の臨床検体を用いて血漿中の可溶性免疫チェックポイント関連をmultiplex immunoassaysを用いて測定するなど、後方視的検討による解析を進めることにより上記の結果を得ることが出来た。 一方、患者から採取した末梢血リンパ球をHBV蛋白で刺激し、3Hチミジンの取り込みによってT細胞の増殖能を、ELISPOTアッセイによってIFNγやIL-10の産生能を測定するなど、基礎的研究も予定していたがこれに関しては遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
R3年度に得られたデータと臨床データとの比較、validationを行う。 1) 臨床データとの比較:上記より得られた末血中の免疫チェックポイント分子、T細胞増殖能、T細胞表面マーカーの経時的変化、肝組織内の遺伝子発現と臨床データを比較する。 ① 抗HBV治療症例:奏功例と無効例の比較を行う。例えば治療中のHBVマーカー(HBs抗原、HBcr抗原、HBV DNA)の変化と可溶性チェックポイント分子の変化との関係を解析する。 ② 肝病態進展症例:線維化ステージ(F1/F2/F3/F4)ごとの可溶性チェックポイント分子の比較、発癌例と非発癌例の可溶性チェックポイント分子の比較などを行う。 2) 外部コホートを用いたvalidation:OCU Liver Studyグループより症例を追加し、当院の患者コホートでの検討よりバイオマーカー候補にあがった分子の有用性について検証を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染拡大のため参加を予定していた学会はリモートになった。また、ELISPOTアッセイ、フローサイトメトリーなどの実験が遅れていることによって、次年度使用額が生じた。R4年度には上記の推進方策に併せてこれらの遅れを取り戻すべく実験計画を加速させる。
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