研究課題
本年度は研究課題の最終年度であり前年度までの研究成果の積み残しに着手した。臨床データベース解析では肝細胞癌への化学療法の予後に及ぼす抗ウイルス効果を報告した。対象はレンバチニブ投与79例とアテゾリズマブ+ベバシズマブ併用30例である。観察期間が短期でありアテゾリズマブ+ベバシズマブ併用治療の予後に抗ウイルス治療効果の関与は認めなかった。またレンバチニブ投与群においても抗ウイルス治療による肝癌再発抑止効果は認めていない。一方、治療開始前後の血液サンプルを用いて可溶性免疫チェックポイント分子を網羅的に解析し、治療効果に相関する分子を同定した。基礎研究では、マウス(C57BL6J)を用いてLuciferase陽性Hepa1-6細胞(1x106)を脾臓内へ注射し肝臓内に腫瘍を形成させるモデルを確立した。脾臓内へHepa1-6細胞を注入後に脾摘した群としない群において肝臓内の腫瘍生着率が大きく異なる事を見出した(脾臓摘出なし: <30%、脾臓摘出あり: >95%)。この結果から脾臓が産生する何らかの因子が腫瘍の肝臓への生着を制御していると推測した。そこで脾摘群と脾摘なし群の血液サンプルと肝組織サンプルからRNAを採取し遺伝子配列を網羅的に解析した。幾つかの候補配列(タンパク質をコード)を抽出し得たが、研究期間内にタンパクの検証までには至っていない。動物モデルの結果を基に臨床データベースから脾摘した肝癌患者を抽出した。摘脾による肝癌再発への影響を明らかにするため臨床背景を一致させた非摘脾肝癌症例との予後を比較追跡中である。また摘脾群と非摘脾群の臨床サンプルを用いて動物実験から推測される癌生着関連因子の発現と予後を検討中である。
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Am J Pathol.
巻: in press ページ: -
10.1016/j.ajpath.2024.03.004.
J Viral Hepat.
巻: 30 ページ: 374-385
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