マウスの細胞系譜解析を用いた検討から、十二指腸乳頭部の胆管周囲付属腺底部に存在するAxin2陽性細胞が、胆管上皮の幹細胞となると同時に十二指腸乳頭部癌の起源細胞となりうることを見出した。さらに、乳頭部付属腺の周囲に存在する平滑筋細胞がRspondin3を分泌し、乳頭部胆管付属腺に特異的なWnt活性化ニッチを形成していることも明らかにした。加えて、Wnt阻害剤LGK974によってマウスにおける乳頭部癌発生が著明に抑制されたことから、乳頭部胆管付属腺に存在するWnt活性化ニッチは乳頭部癌発症にも寄与しており、治療標的となる可能性が示唆された。 ここまでの検討から、乳頭部のAxin2陽性胆管付属腺細胞が胆管幹細胞・癌起源細胞として機能することがわかったが、Axin2は総胆管の胆管付属腺および表層上皮細胞にpatchyに発現しており、かつ細胞系譜解析を行うとリボン状に増殖していた。したがって、総胆管では乳頭部とは違った形で恒常性が維持されていると考えられた。そこで、総胆管でも胆管付属腺が幹細胞として機能しているのかどうかを検討するため、総胆管における胆管付属腺の特異的マーカーを探索した。様々な幹細胞マーカーの発現をISHにて検討したところ、小腸の幹細胞マーカーの一つOLFM4が総胆管の胆管付属腺特異的に発現していることを見出した。これらのデータから、Olfm4 promoter下にTamoxifen-inducible Cre リコンビナーゼを発現するノックインマウスをCRISPR-Cas9システムを用いて作製し、F0キメラマウスを得た。
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