炎症性腸疾患(IBD)であるクローン病は小腸と大腸に炎症・潰瘍を生じる疾患である。特に小腸は生命維持に必須の臓器であるため、小腸の機能を維持することが重要となる。 申請者がこれまで独自に構築した評価法にて初めて小腸病変の難治性を発見した。一方、基礎的検討にて申請者らが独自に構築したヒト体外IBDモデルにおいて 小腸上皮細胞は炎症刺激に対して脆弱性が強いという知見を得た。そこで小腸特異的な炎症脆弱性機構の解明が小腸難治化の解決に直結すると着想した。本研究では独自に構築したヒト小腸・大腸炎症モデル及び小腸病変残存クローン病症例臨床検体を活用し、小腸炎症脆弱性を制御する鍵分子の同定を目的とする。得られる成果は小腸難治性疾患に対する新規治療の標的として期待できる。本研究では1)ヒト小腸オルガノイド慢性炎症脆弱度評価、2)慢性炎症 脆弱性とクローン病病態との関連解析、3)小腸特異的慢性炎症脆弱性鍵分子の同定を大きな柱としている。 2022年度までにヒト小腸オルガノイド慢性炎症脆弱度評価として、小腸オルガノイドにおけるIL-8などの炎症性サイトカイン産生、Duoxa2などの酸化ストレス関連因子の発現を生存期間中の時系列を解析し、大腸での発現と比較した。また、慢性炎症脆弱性とクローン病病態との関連解析として、クローン病小腸病変部、非病変部オルガノイドの樹立と、クローン病治療にて大腸は治癒したが小腸のみ病変が残存している患者からの小腸・大腸オルガノイドの樹立を行った。 2023年度には持続炎症刺激を行い、慢性炎症脆弱度の評価を行った。小腸病変部特異的因子と炎症脆弱度の関連解析については上記オルガノイドを未刺激の状態にてマイクロアレイ解析を行い、小腸病変特異的発現遺伝子を同定する予定である。
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