研究課題/領域番号 |
21K08009
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
直江 秀昭 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 准教授 (30599246)
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研究分担者 |
古田 陽輝 熊本大学, 病院, 特任助教 (00869513)
渡邊 丈久 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 助教 (20634843)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 炎症性発癌 |
研究実績の概要 |
発癌物質AOMの腹腔内投与に加えて、炎症誘発物質であるDSSの飲水による腸炎を組み合わせることで、大腸腫瘍を誘発した。その結果、Cdh1活性型マウス、コントロールマウスともにDSS投与後、一時的に体重減少が見られたが、その後は順調に回復した。Cdh1活性型マウス12匹、コントロールマウス11匹について、実験開始から42日後に開腹し大腸を観察した。その結果、コントロールマウスに比べて、Cdh1活性型マウスでは多くの大腸腫瘍を形成しており、大腸の長さ自体も短縮している傾向にあった。 この大腸腫瘍の解析結果から、Cdh1活性化型マウスでは他の臓器においても同様に腫瘍を形成しやすい可能性が考えられた。そこで、コリン欠乏・高脂肪食による肝腫瘍誘発実験を行った。具体的には、コリン欠乏・高脂肪食を摂取させ、経時的な血液検査と超音波検査による肝臓の観察を行った。その結果、両系統のマウスで血中のALT、LDHの増加がみられ、数匹のマウスでは超音波検査で肝臓内に形成された複数の腫瘤を認めた。肝癌の腫瘍マーカーであるAFPも同時に測定しているが、結果のばらつきが大きく、現在のところ一定の傾向は見られていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Cdh1のヘテロ活性化型マウス同士の交配によりCdh1ホモ活性化型マウスを得ているが、ホモ活性化型マウスの産仔が生まれる確率が想定よりも低く、十分数のホモ活性化型マウスを確保することに難渋した。また、本実験で最もポリープを多く形成するタイミングが不明であり、実験開始後の経過日数をずらして大腸を確認する予備実験に日数を要した。 一方、大腸ポリープ部と周囲の正常粘膜部の組織を採取し、RNAを抽出しているが、解析に足るRNAの抽出量が安定せず、現在、組織採取量と抽出方法の検討を行っている。これらの条件検討に要する時間も、進捗がやや遅れている原因と考えている。 初年度に予定していたマウス腸管の免疫学的解析は、時間的にまだ実行できていないが、免疫学的解析用のサンプルは蓄積している。
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今後の研究の推進方策 |
Cdh1ホモ活性型マウスを増やすことについては、当初ヘテロマウス同士の交配を行っていたが、ホモ活性化型メスを安定的に維持できるようになったため、今後はこのメスを用いることでホモ活性化型マウス確保の時間は短縮されると予想される。大腸ポリープと周囲組織由来のRNA抽出は今年度の早いうちに完了する予定であり、その後はRNA-Seqによる網羅的な解析を準備している。 コリン欠乏・高脂肪食による肝腫瘍の検討は、さらに解析数を増やすことで肝腫瘍の数やサイズについて統計的な差異を明らかにする。また、形成された肝腫瘍を病理学的に解析し、腫瘍の性質を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
1.目的とする遺伝子型のマウスの生産量が少なかったことで、飼育費が予想より抑えられた。 2.RNA抽出に時間を要したことから、本年度中にRNAアレイ解析ができなかった。またデータ解析用のPCの購入も今年度は不要であった。次年度に計上予定である。 3.COVID-19の流行により、参加を予定していた学会がオンライン開催となったことで旅費が不要となった。
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