研究課題/領域番号 |
21K08017
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研究機関 | 産業医科大学 |
研究代表者 |
馬場 良子 産業医科大学, 医学部, 准教授 (90271436)
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研究分担者 |
森本 景之 産業医科大学, 医学部, 教授 (30335806)
國分 啓司 産業医科大学, 医学部, 助教 (00432740)
中村 健太 産業医科大学, 医学部, 修練指導医 (60789692)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 回腸 / パネート細胞 / 杯細胞 / 顆粒杯細胞 / 中間型細胞 / オルガノイド |
研究実績の概要 |
炎症性腸疾患でパネート細胞の異所性出現および異常が生じることが知られている。また、パネート細胞の異常と腸炎発症やクローン病再燃との関連が報告される等、パネート細胞の性状が疾患の起点となる可能性が示唆されている。私達はこれまでに、発達段階のパネート細胞特異的にエピジェネティックな変化が生じ、その前後で形態的特徴が変化すること、未熟なパネート細胞の形態が疾患時と類似することを発見した。 そこで、発達段階と疾患時のパネート細胞との形態的共通性、エピジェネティック制御の関与を解明する目的で本研究を計画した。パネート細胞の成熟に関わる機構を明らかにすることで、炎症性腸疾患発症の機序解明にも繋がると考える。 今年度は生後0、7、14、21、28日齢および成熟マウスを用い、生後の発達に伴う小腸の形態変化を詳細に観察した。その結果、パネート細胞は陰窩形成が生じる生後14日齢の陰窩底部に出現した。しかし、それ以前の小腸においては、杯細胞および顆粒をもった杯細胞(顆粒杯細胞)は存在するものの、パネート細胞は見られなかった。生後21日齢以降では陰窩が深くなり、パネート細胞の数が増加した。パネート細胞が出現する以前に、パネート細胞と杯細胞の中間のような形態を示す細胞(中間型細胞)が観察された。また、パネート細胞が出現した後も中間型細胞が存在し、杯細胞とパネート細胞の間に位置した。 また、生後0、7、14、21、28日齢および成熟マウスを用い、DNAおよびヒストンのメチル化について免疫組織化学的に解析を行った。その結果、生後14日齢以降に陰窩底部に出現するパネート細胞に一致してH3K27me3陽性が認められた。 さらに、乳飲期マウスの回腸よりオルガノイドを作製し、H3K27のメチル化を阻害した結果、時期特異的にパネート細胞の成熟と陰窩形成が抑制された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、(1)正常マウスを用いた解析、(2)腸炎モデルマウスを用いた解析、(3)オルガノイドを用いた解析を計画している。 現在までに、(1)については、時間軸に沿って、回腸の形態、パネート細胞の出現と成熟について、超微形態学的解析が終了した。また、各時期におけるDNAおよびヒストンのメチル化について、免疫組織化学的解析が終了した。3)については、乳飲期および成熟期の回腸からそれぞれオルガノイドを作製することに成功し、メチル化阻害剤の影響について、形態学的および免疫組織化学的解析が終了した。
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今後の研究の推進方策 |
今後、(1)については、生後14日齢以降に成熟パネート細胞が存在することが分かったため、その前後で発現が変動する遺伝子について、マイクロアレイ解析を行うことを予定している。(2)については、腸炎モデルを作製し、小腸および大腸の部位ごとに形態学的解析を行うこと、正常と腸炎で発現が変動する遺伝子について、マイクロアレイ解析を行うことを予定している。(3)については、炎症性サイトカインを用いて炎症を誘導し、形態学的に解析を行うことを予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
マイクロアレイ解析について、外部委託することを予定している。現在、マイクロアレイ解析を行うための基礎的な情報を得ることができた段階であり、まだ、マイクロアレイ解析を行うことができていないため、次年度使用額が生じた。今年度、マイクロアレイ解析を行う予定で研究を進めている。
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