マルファン症候群において血管内皮由来酸化ストレスに起因する大動脈瘤形成の分子病態

2023 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 21K08023
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 赤澤 宏 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (20396683)
• 研究期間 (年度): 2021-04-01 – 2024-03-31
• キーワード: 大動脈瘤 / 酸化ストレス / 血管内皮細胞 / マクロファージ / 性差

研究実績の概要

マルファン症候群（MFS）はFBN1の遺伝子異常により全身の結合組織の構造・機能破綻を来す常染色体優性の希少難治性疾患である。これまでの検討から、FBN1の遺伝子異常によって組織脆弱性に起因するメカニカルストレスが増大し、アンジオテンシンII受容体の活性化によって酸化ストレスを産生するxanthine oxidase (XO)の発現が大動脈の血管内皮細胞で亢進することを明らかにした。Fbn1C1039G/+マウスでは大動脈の内膜だけでなく中膜でも酸化ストレスが増大している。Fbn1C1039G/+マウスの大動脈ではNox2の遺伝子発現が亢進しているが、血管内皮特異的XOノックアウトマウスと交配するとNox2遺伝子の発現増加が抑制されることを見出した。つまり、血管内皮XO由来の酸化ストレスの増加をトリガーとして、中膜組織ではNADPHオキシダーゼ由来の酸化ストレスを増加させることで、大動脈瘤形成が促進する可能性が示唆された。また、Fbn1C1039G/+マウスでは大動脈瘤形成とともに大動脈外膜に浸潤するマクロファージにおいてXOの発現が増加する。マクロファージXOノックアウトマウスと交配すると大動脈瘤形成が抑制されるとともに、血管内皮におけるXOの発現増加も抑制された。以上より、血管内皮におけるXOの発現増加がトリガーとなり、酸化ストレスの増加が内膜から中膜へと波及し、さらにマクロファージの浸潤から大動脈瘤形成が促進されるが、大動脈瘤形成は大動脈壁のメカニカルストレスを増加させることで血管内皮におけるXO発現を亢進されるという、悪性サイクルの形成が瘤形成の病態の本質であることが明らかとなった。

研究成果

• [雑誌論文] Shared and Reciprocal Mechanisms Between Heart Failure and Cancer ― An Emerging Concept of Heart-Cancer Axis ― (2024)
  • 著者名/発表者名: Kadowaki Hiroshi、Akazawa Hiroshi、Shindo Akito、Ueda Tomomi、Ishida Junichi、Komuro Issei
  • 雑誌名: Circulation Journal 巻: 88 ページ: 182～188
  • DOI: 10.1253/circj.CJ-23-0838
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] A case of progressive right ventricular failure with ventricular arrhythmia and aortic insufficiency after implantable left ventricular assist device implantation (2024)
  • 著者名/発表者名: Jimba Takahiro、Hatano Masaru、Fujiwara Takayuki、Akazawa Hiroshi、Watanabe Masafumi、Kinugawa Koichiro、Ono Minoru、Komuro Issei
  • 雑誌名: Journal of Cardiology Cases 巻: 29 ページ: 7～10
  • DOI: 10.1016/j.jccase.2023.08.017
  • 査読あり
• [雑誌論文] Deep Learning Models for Predicting Left Heart Abnormalities From Single-Lead Electrocardiogram for the Development of Wearable Devices (2023)
  • 著者名/発表者名: Sato M、Kodera S、Setoguchi N、Tanabe K、Kushida S、Kanda J、Saji M、Nanasato M、Maki H、Fujita Hi、Kato N、Watanabe H、Suzuki M、Takahashi M、Sawada N、Yamasaki M、Sawano S、Katsushika S、Shinohara H、Takeda N、Fujiu K、Daimon M、Akazawa H、Morita H、Komuro I
  • 雑誌名: Circulation Journal 巻: 88 ページ: 146～156
  • DOI: 10.1253/circj.CJ-23-0216
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] PGC-1alpha-mediated angiogenesis prevents pulmonary hypertension in mice (2023)
  • 著者名/発表者名: Fujiwara T、Takeda N、Hara H、Ishii S、Numata G、Tokiwa H、Katoh M、Maemura S、Suzuki T、Takiguchi H、Yanase T、Kubota Y、Nomura S、Hatano M、Ueda K、Harada M、Toko H、Takimoto E、Akazawa H、Morita H、Nishimura S、Komuro I
  • 雑誌名: JCI Insight 巻: 8 ページ: e162632
  • DOI: 10.1172/jci.insight.162632
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] An explainable artificial intelligence-enabled electrocardiogram analysis model for the classification of reduced left ventricular function (2023)
  • 著者名/発表者名: Katsushika Susumu、Kodera Satoshi、Sawano Shinnosuke、Shinohara Hiroki、Setoguchi Naoto、Tanabe Kengo、Higashikuni Yasutomi、Takeda Norifumi、Fujiu Katsuhito、Daimon Masao、Akazawa Hiroshi、Morita Hiroyuki、Komuro Issei
  • 雑誌名: European Heart Journal - Digital Health 巻: 4 ページ: 254～264
  • DOI: 10.1093/ehjdh/ztad027
  • 査読あり / オープンアクセス
• [学会発表] 大動脈弁閉鎖不全症診断における胸部レントゲン画像と心電図を統合したバイモーダルAIの可能性 (2024)
  • 著者名/発表者名: 早道奏喜、佐藤将敬、小寺 聡、藤井恵美、岸川理紗、澤野晋之介、篠原宏樹、東邦康智、藤生克仁、赤澤 宏、小室一成
  • 学会等名: 第271回日本循環器学会関東甲信越地方会
• [学会発表] 循環器学と腫瘍学と腫瘍循環器学 (2024)
  • 著者名/発表者名: 赤澤 宏
  • 学会等名: 第21回日本臨床腫瘍学会学術集会
  • 招待講演
• [学会発表] Comment to “Early Detection and Prediction of Cancer Therapy-Induced Cardiac Dysfunction in Patients Receiving Anthracycline Chemotherapy”. (2024)
  • 著者名/発表者名: Hiroshi Akazawa
  • 学会等名: 第88回日本循環器学会学術集会
  • 招待講演
• [学会発表] End-Stage Hypertrophic Cardiomyopathy is caused by Multiple Variants in Genes Associated with Various Cardiomyopathies. (2024)
  • 著者名/発表者名: Takashi Hiruma, Shunsuke Inoue, Seitaro Nomura, Zhehao Dai, Manami Katoh, Toshiyuki Ko, Junichi Ishida, Eisuke Amiya, Masaru Hatano, Norifumi Takeda, Eiki Takimoto, Hiroshi Akazawa, Hiroyuki Morita, Toru Kubo, Hiroaki Kitaoka, Issei Komuro
  • 学会等名: 第88回日本循環器学会学術集会
• [学会発表] Clinical Characteristics and Prognosis of Chronic Myeloid Leukemia Patients with Ischemic Heart Disease: Insight from the JROAD-DPC Registry. (2024)
  • 著者名/発表者名: Akito Shindo, Hiroshi Akazawa, Tomomi Ueda, Hiroshi Kadowaki, Junichi Ishida, Issei Komuro
  • 学会等名: 第88回日本循環器学会学術集会
• [学会発表] 心不全における心腸連関 (2024)
  • 著者名/発表者名: 赤澤 宏
  • 学会等名: 第51回日本集中治療医学会学術集会
  • 招待講演
• [学会発表] CTRCDから考える二次性心筋症のパラダイム (2023)
  • 著者名/発表者名: 赤澤 宏
  • 学会等名: 第9回日本心筋症研究会
  • 招待講演
• [学会発表] 骨髄腫患者のマネージメント：腫瘍循環器の視点から (2023)
  • 著者名/発表者名: 赤澤 宏
  • 学会等名: 第48回日本骨髄腫学会学術集会
  • 招待講演
• [学会発表] アンチエイジングの視点で考える血栓症と抗凝固療法 (2023)
  • 著者名/発表者名: 赤澤 宏
  • 学会等名: ・ 第22回日本抗加齢医学会総会
• [学会発表] 集学的治療により自宅退院を達成した、急性白血病を合併したカテコラミン依存重症心不全の一例 (2023)
  • 著者名/発表者名: 松井楓子、進藤彰人、石田純一、赤澤 宏、本田 晃、黒川峰夫、小室一成
  • 学会等名: 第268回日本循環器学会関東甲信越地方会
• [学会発表] 血管新生阻害薬投与中の患者に対し、血圧管理が必要か (2023)
  • 著者名/発表者名: 赤澤 宏
  • 学会等名: 第6回日本腫瘍循環器学会学術集会
  • 招待講演
• [学会発表] Onco-Cardiology: Where Do We Come From? What Are We? Where Are We Going? (2023)
  • 著者名/発表者名: Hiroshi Akazawa
  • 学会等名: 第6回日本腫瘍循環器学会学術集会
• [学会発表] 骨髄腫患者の腫瘍循環器マネジメント (2023)
  • 著者名/発表者名: 赤澤 宏
  • 学会等名: 第6回日本腫瘍循環器学会学術集会
• [学会発表] 小児がんサバイバーの心エコー図所見の特徴 (2023)
  • 著者名/発表者名: 進藤彰人、赤澤 宏、石田純一、植田智美、門脇 裕、小室一成
  • 学会等名: 第6回日本腫瘍循環器学会学術集会
• [学会発表] 腫瘍循環器診療における重症心不全治療 (2023)
  • 著者名/発表者名: 石田純一、波多野 将、辻 正樹、網谷英介、植田智美、進藤彰人、門脇 裕、赤澤 宏、小室一成
  • 学会等名: 第6回日本腫瘍循環器学会学術集会
• [図書] 腫瘍循環器診療 実践トレーニング (2024)
  • 著者名/発表者名: 小室一成（監修）、日本腫瘍循環器学会（編集）
  • 総ページ数: 240
  • 出版者: メジカルビュー社
  • ISBN: 978-4-7583-2214-0
• [図書] アンチエイジング医学の基礎と臨床 (2023)
  • 著者名/発表者名: 日本抗加齢医学会 認定テキスト改訂版編纂委員会
  • 総ページ数: 444
  • 出版者: メジカルビュー社
  • ISBN: 978-4-7583-0496-2