研究課題/領域番号 |
21K08025
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
奥村 貴裕 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院講師 (60635598)
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研究分担者 |
吉田 恭子 (今中恭子) 三重大学, 医学系研究科, 教授 (00242967)
竹藤 幹人 名古屋大学, 医学部附属病院, 講師 (20709117)
鈴木 忠樹 国立感染症研究所, 感染病理部, 部長 (30527180)
室原 豊明 名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (90299503)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 心筋炎 |
研究実績の概要 |
急性心筋炎は、ウイルス感染、自己免疫疾患、薬剤反応等によって惹起される心筋を首座とした炎症性疾患である。ときに重篤な心機能障害や不整脈から致死的となり、強心薬や機械的循環補助を要する劇症型の経過をとる。ステロイドや免疫グロブリンといった免疫抑制療法および免疫調整療法に関するわが国の治療方針は、組織分類に基づいており、PCRによるウイルスゲノムの存否に基づく欧米の指針と異なる。このため、劇症型心筋炎に対する免疫抑制療法と免疫調整療法の有効性について、多施設共同コホート(CHANGE-PUMP2研究)で検討した。補助循環を要した劇症型心筋炎215例を対象とし、ステロイドと免疫グロブリン製剤の使用状況と90日および6年後の転帰との関連を調査した。ステロイド使用は全体の39.5%を占め、ガンマグロブリン使用は43.3%を占めた。ほとんどのケースで、ステロイドは入院後7日以内に投与されていた。また、パルス療法と維持ステロイド療法の両方を受けた患者では、すべてのケースでパルス療法が先行されていた。いっぽう、ほとんどのケースで免疫グロブリンは入院後3日以内に投与されていた。患者背景については、ステロイド群ではImpella使用率が高く、好酸球性心筋炎が多く、免疫グロブリン併用率が高かった。一方、免疫グロブリン群は、年齢が若く、VA-ECMOとImpella使用率が低く、ステロイドの併用率が高かった。予後解析では、ステロイド使用の有無で90日および6年後の予後に有意差はなかったが、免疫グロブリン使用群は、短期および長期ともに予後不良であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2024年3月を以て前向き観察研究(MERCURY研究)の症例登録を終えた。当初本研究の立案時には、目標症例数は200症例と設定したが、研究期間中にCOVID-19パンデミックの影響があり、急性心筋炎とりわけ劇症型の重症例の確保に難渋した。このため、補助事業期間の延長申請を行い、最終年度で症例フォローアップと各種データの解析を進める予定である。
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今後の研究の推進方策 |
前述のとおり、症例数確保に難渋したが、2024年3月を以て前向き観察研究(MERCURY研究)の症例登録を終えた。補助事業期間の延長申請を行い、2024年度で症例フォローアップと各種データの解析を進める予定である。これまでにREDCap-EDCシステムに集積したデータをクリーニング・固定し、解析データベースを構築する。また、本研究では、血液、尿および心筋検体を収集・保存しており、早期診断や予後に関連するバイオマーカーの測定を進める。また、わが国ではこれまであまり行われてこなかったウイルスゲノム検出に関するサブグループ解析やCOVID-19関連心筋炎に関するサブカテゴリ解析、同ワクチン関連心筋炎や免疫チェックポイント阻害薬関連心筋炎に関するサブ解析を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)研究期間中にCOVID-19パンデミックの影響があり、急性心筋炎とりわけ重症例である劇症型心筋炎の症例確保に難渋し、症例登録に遅れが生じた。このため、補助事業期間の延長申請を行い、2024年度に症例のフォローアップと収集試料(尿、血液、心筋検体等)におけるバイオマーカー探索・測定を行うことし、成果公表分と合わせて、必要な費用を繰り越すこととなった。 (使用計画)繰り越し分の費用は、既に使用しているREDCap-EDCシステムの延長維持費用に充てる。また、既に収集した血液、尿および心筋試料を用いたバイオマーカー探索と解析に使用する予定である。さらには、これらの成果を英語論文等で広く公表するための投稿費に充てる。
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