研究課題/領域番号 |
21K08028
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
森田 宏 岡山大学, 医歯薬学域, 教授 (50322227)
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研究分担者 |
川田 哲史 岡山大学, 大学病院, 助教 (40897576)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 心臓突然死 / 心室頻拍 / 不整脈ストーム / 心臓サルコイドーシス / Brugada症候群 / 特発性心室細動 / QT延長症候群 / 早期再分極症候群 |
研究実績の概要 |
本年度も引き続き各疾患のデータベース拡充を行った。2023年度末の時点でBrugada症候群は681例、特発性心室細動は67例、先天性QT延長症候群は256例、心臓サルコイドーシスで心室頻拍・細動例は52例となった。 Brugada症候群では完全右脚ブロック例の解析を行った。完全右脚ブロックは通常、刺激伝導系である右脚本幹の障害により発生し、右室全体の興奮伝播が遅れとされている。 Brugada症候群における右脚ブロックは右脚本幹の障害以外にも、約60%の例で右脚末梢から右室心筋にかけての伝導障害により右脚ブロック型波形を呈し、特に右室前壁から流出路にかけての興奮伝播遅延が著明であった。一方、器質的心疾患のない完全右脚ブロック例では全例で右脚本幹障害による右室全域の伝導遅延を示した。Brugada症候群例で伝導遅延が著明な例では心室細動発作の頻発が多くみられた。本解析はJournal of American Heart Associationに投稿、アクセプトされた(in press)。また、Brugada症候群での突然死リスク評価方としてナトリウムチャネル遮断薬負荷試験があるが、当施設でこれまでに行ってきたデータを含めて、欧米の3施設と併せて国際共同執筆として、総説を執筆し、European Heart Journalにアクセプトされた(in press)。心臓サルコイドーシスの解析では心室頻拍を有する (52例)のデータベースより、心室頻拍の電気的ストームを来す例の特徴を解析した。約80%の例で心臓症状がサルコイドの初発症状であり、18%の症例で初回の心室頻拍エピソードが電気的ストームであった。電気的ストームと関連する所見としてQRS棘波、J波、ε波の存在が重要であった。発生した心室頻拍の特徴は多源性、多形性、早い心拍数が電気的ストームと関連した。現在論文作成中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①各疾患のデータベース拡充は順調に進んでいる。②Brugada症候群:Brugada症候群での完全右脚ブロックの機序および臨床的意義付けについて解析を行い、論文が受理された(Journal of American Heart Association, in press)。Brugada症候群のナトリウムチャネル遮断薬負荷試験の意義について、総説を執筆し、受理された(European Heart Journal, in press)。③AI解析:R4年度後期より、Brugada症候群の心室細動発生因子、電気的ストーム発生因子について、心電図波形のAI解析を開始した。④心臓サルコイドーシスの心室頻拍・電気的ストームのリスク因子についての解析を行い、論文作成中である。⑤特発性心室細動のうち、J波症候群(早期再分極症候群)はデータ解析を行い、R4年度の第68回日本不整脈心電学会学術大会の特別セッション(J Wave Syndrome Summit 2022 in Japan)で発表し、各項目について追加解析を行い、論文執筆中である。⑥日本国内の多施設共同によるQT延長症候群のdeep sequencing analysisをおこない、QT延長関連のRYR2遺伝子のN末端の変異が比較的多いことを発見し、論文が受理された(PLoS ONE 17(12): e0277242)。⑦この他、QT延長症候群の症例報告、成人先天性心疾患の心室頻拍のリスク因子、心室頻拍治療における自律神経修飾についてデータ解析を行い、論文作成中である。
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今後の研究の推進方策 |
①今後もデータベース拡充を図り、心筋症(肥大型心筋症、拡張型心筋症、心臓サルコイドーシス)、特発性心室細動(Brugada症候群、J波症候群)、成人先天性心疾患(特にFallot四徴症)、陳旧性心筋梗塞について、解析を進めていく。 ②J波症候群の不整脈発生基盤の空間的分布、リスク評価、電気的ストームの発生要因については解析をほぼ終了しており、R5年度中の論文作成、投稿を目指している。 ③成人先天性心疾患における心室頻拍・電気的ストームの特徴について解析・論文作成中であり、R5年度前期中の投稿を目指す。 ④Brugada症候群の心室細動発生因子、電気的ストーム発生因子を心電図のAI解析で予測する研究を開始しており、R5年度中のデータ解析を目指している。 ⑤上記の様にこれまでに行ってきた解析で不整脈ストーム予測因子を同定できるものは、早期に解析・論文化を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度もコロナ感染症のため海外での国際学会がWEB開催となり、予定していた旅費の使用がなかったため。使用計画としては、次年度実施予定のBrugada症候群の心室細動発生因子、電気的ストーム発生因子を心電図のAI解析で予測する研究で得られたデータ解析等に必要な費用に充当する。
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