研究課題
動脈硬化の本態は慢性炎症である。ミトコンドリアは自身の遺伝子を持っているが、ミトコンドリア内のタンパクのほとんどは核のDNAによってコードされている。一方、染色体の安定性には健全なミトコンドリア機能が不可欠である。本研究では、このような核とミトコンドリアの緊密な相互作用が刻々と変化する細胞環境への対応に重要な役割を果たしていることを明らかにする。我々は動脈硬化の発症に核のDNA損傷が深く関わっていることを明らかにしてきた。本研究は、動脈硬化の危険因子であるタバコ煙の水溶性成分は、核の酸化的DNA損傷を惹起するだけでなく、ミトコンドリアの機能障害を生じさせ、Bak/Bax、caspase-3を介するminority mitochondria outer membrane permeabilizationの惹起、caspase-3の活性化、それによる細胞質のcaspase-activated DNase(CAD)の阻害蛋白の分解による核内のCADを増加を通して核DNAの二本鎖切断を生じさせるということを示した。以上より、ミトコンドリアの障害によって核DNAの二本鎖切断が生じることが明らかとなった。また、ミトコンドリアDNAと核DNA断片は、それぞれBAK/BAXによって生じたミトコンドリア膜のporeと核膜を通して細胞質に移動、蓄積し、cGAS-STINGの活性化、TBK1のリン酸化、NFkBの活性化を介してIL-6を増加させた。低濃度のエチジウムブロマイドによって内皮細胞のミトコンドリアを枯渇させると、タバコ煙によるIL-6の増加が消失した。以上の研究から、タバコ煙は核DNAへの直接損傷だけでなく、ミトコンドリア障害を介した一連のシグナルによって更なる核DNA損傷を惹起する、というmito-nuclear crosstalkが示された。
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