研究課題
心奇形(単心室等)に対するFontan術を施行された後に、5~10年の経過で約50%がうっ血肝から肝硬変に進展し、中には肝癌を発症する症例がある。この、Fontan術後の肝合併症(FALD, Fontan associated liver disease)は循環器外科と肝臓内科との狭間に存在するために、肝臓精査が遅れ、肝硬変・肝癌へ進行した状態で発見される場合が多い。FALDの病態は多彩で、肝線維化の進行が急速に進行する症例と緩徐な症例の判別、発癌の有無の判別は生命予後に関連するが、その診断方法は確立されていないという学術的「問い」がある。 FALD症例では、予後決定に関するリスク因子は不明であり、線維化進展や生命予後が評価可能なバイオマーカーの確立が必要である。申請者らは成人慢性肝疾患症例での線維化進行は発癌危険因子であり、Elastographyを用いた非侵襲的肝線維化診断の有用性と、最新の2光子励起顕微鏡を用いたSHG(Second harmonic generation)イメージを用いて肝線維化の進行過程を評価してきた。更に、成人肝硬変症例の生命予後には骨格筋量低下(サルコペニア)が危険因子であることを報告している。本研究の目的は、肝硬変への進展リスク群を、Elastographyを用いて非侵襲的に予測可能かを評価する事である。最終年度ではこれまでの研究成果をもとに、サルコペニアはFontan循環不全の予測因子であり、FALDによる肝線維化進展のリスク因子となると考えられた。骨格筋量の評価は、Fontan循環における多臓器不全の包括的なスクリーニングツールとなる可能性があることを明らかとし、その成果を2024年6月にイタリアで開催される欧州肝臓学会で発表する予定である。また、発表内容を論文化していく方針としている。
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