研究課題/領域番号 |
21K08033
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
前村 浩二 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 教授 (90282649)
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研究分担者 |
池田 聡司 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 講師 (10336159)
江口 正倫 長崎大学, 病院(医学系), 助教 (70585405)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 肺高血圧症 / 長鎖ノンコーディングRNA / バイオマーカ / 低酸素 |
研究実績の概要 |
肺動脈性肺高血圧症(PAH)は予後不良の病態であり、早期診断のためのバイオマーカや新しい機序の治療薬の開発が喫緊の課題である。昨今、タンパク質をコードしないRNAであるノンコーディングRNA(ncRNA)の役割が注目されており、ncRNAの中で、長鎖ncRNA(lncRNA)はそのエピジェネティックな効果により、様々な病態に関与していることが明らかになって来つつある。PAHの成因の1つとしてエピジェネティックな変化が関与していることより、lncRNAがPAHの病態に関与している可能性が高い。そこで本研究では、PAH症例の血液を用いて網羅的なスクリーニングを行い、PAH発症のバイオマーカとして有用なlncRNAを探索する。 昨年度は保存した患者血液の状態が良くなかったためか、lncRNAの測定ができず結果を得られなかった。そこで今年度は新たにPAHが疑われ、右心カテーテル検査が行われた症例の肺動脈と左心室から血液サンプルを採取するとともにcDNAの調整法も変更して、lncRNA量を網羅的に測定することにより、目的とするlncRNAの候補を同定することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年度は、血清からRNAを抽出し(miRNeasy Serum/Plasma kit)、QIAGEN RT2 lncRNA PCR Arrayを用いPCRを行った。しかし、RNA濃度が低値であり、十分な解析ができなかった。2022年度は新たな患者検体を用いるとともに、QIAGEN RT2 PreAMP cDNA Synthesis kitを用い血清から抽出したcDNAの増幅を行いPCRを施行して解析が可能となった。3種類のQIAGEN RT2 lncRNA PCR Array plate(LAHS-001Z、003Z、004Z)を用い252種類のlncRNAを網羅的にスクリーニングを行い、PAH発症のバイオマーカーとして有用なlncRNA(①PAH患者では肺循環で上昇する(肺動脈より左心室で高値)、②コントロール患者では肺循環で変化しない、③コントロール患者に比較してPAH患者で高値、の3つ条件を満たすlncRNA)の探索を行い、候補となるlncRNAを見いだしている。当初は初年度に目的とするlncRNAを同定し、2年目は機能解析を行う予定だったため進捗はやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度にPAHに関連するlncRNAの候補をいくつか見いだすことができた。見いだしたlncRNAについて、当科で保管している多数の患者の血清サンプルを用い、該当lncRNAがPAHの診断マーカとして有効か検証する。さらに、当該lncRNAの左心室/肺動脈比をとって肺循環での変化率を計測し、右心カテーテル検査で得られた平均肺動脈圧や肺血管抵抗との相関性を検討し、該当lncRNAが重症度マーカとして妥当かを検証する。さらに該当lncRNAの機能を解析する目的で以下の研究を予定している。1)肺動脈平滑筋細胞や肺動脈内皮細胞を用いて、PAHの増悪因子であるendothelin-1、Platelet Derived Growth Factor (PDGF)、TGF-β、低酸素などで刺激し、同定されたlncRNAの発現の変化を検証する。2)培養上清中のlncRNAを評価し、細胞伝達媒体としての可能性を評価する。3)lncRNAを細胞内に導入、あるいは、siRNAを用いlncRNAを阻害し、細胞の増殖能やアポトーシスなどを評価し、PAHの治療法としての可能性を検討する。また同定されたlncRNAのマウスでのhomologが同定できれば、肺高血圧モデルマウスを用いて当該lncRNAが肺組織やその他の臓器で発現が変化するか確認し、血中のlncRNAの量と相関するか検討する。
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