研究課題/領域番号 |
21K08035
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
三浦 哲嗣 札幌医科大学, 医学部, 名誉教授 (90199951)
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研究分担者 |
丹野 雅也 札幌医科大学, 医学部, 准教授 (00398322)
矢野 俊之 札幌医科大学, 医学部, 講師 (40444913)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 細胞死 / ネクロプトーシス / 細胞内情報伝達 |
研究実績の概要 |
心筋細胞のネクロプトーシスを誘導する細胞内シグナル伝達と介在板蛋白の修飾との関連を解明することに解析に先立って、ネクロプトーシスに伴う介在板の変化の形態的特徴とリン酸化MLKL発現の細胞内分布について、拡張型心筋症の心内膜生検標本とδサルコグリカン欠損マウスの心筋、肥大型心筋症の剖検例を対象に解析を行った。拡張型心筋症の心筋では、心筋細胞の脱落と間質線維化とは部位と量ともに関連があり、心筋細胞死の超微形態はネクローシスの特徴を有していた。介在板が抗リン酸化MLKL抗体で染色される細胞は心室筋組織に幅広く分布するのに対し、細胞質が染色される細胞は心筋脱落・線維化巣の周囲に多く、また細胞質がリン酸化MLKL陽性の心筋細胞と介在板を境とした隣接の細胞では細胞質のリン酸化MLKLシグナルの程度は大きく異なることが観察された。こうしたリン酸化MLKの発現亢進部位と、心筋細胞の脱落、間質線維化の関係はδサルコグリカン欠損マウスの心筋でもほぼ同様に認められた。一方、肥大型心筋症の剖検例の左室心筋では抗リン酸化MLKL抗体に介在板が染色される心筋細胞は見られるものの、細胞質の染色はほとんど認められなかった。以上の所見と、ネクロプトーシス誘導シグナルの活性化によってリン酸化され細胞膜を破綻させるMLKLはゴルジ装置-微小管-アクチンファイバーによって細胞膜に輸送されるという最近の報告を考え併せると、ネクロプトーシスによる細胞死は主に細胞質でのリン酸化MLKLレベルに規定される一方、介在板のMLKLは細胞死ではなく心筋細胞相互の収縮機能連関や細胞死が隣接する細胞へ伝搬することの制御に関与している可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
定年退職にともなう勤務先の変更による研究環境の変化と、新型コロナウイルス感染症の流行による研究活動を含めて行動制限の結果、実験を実施のする時間の制限と、新規の細胞株の入手と培養の実施が困難となり、研究全体の進行が著しく遅延することとなった。 また、本プロジェクトと並行して参画しているネクロプトーシス関連の研究にも遅れがあり、その挽回のための時間に当初計画よりも多くを費やすしたことも本プロジェクトの遅延につながった。
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今後の研究の推進方策 |
研究環境について改善があり、新型コロナウイルス感染による行動制限も緩和されつつあることから、実験時間の確保が可能となる見込みである。来年度の実験の遂行にあたるスタッフの増員、実験の一部の外部委託などによって、当初予定した実験計画の遅れを取り戻す予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の蔓延の影響を受け、新規の細胞株の購入や関連備品の購入に支障が生じため多額の残額が生じた。次年度には購入が可能である見込みとなっている。
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