研究課題/領域番号 |
21K08035
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
三浦 哲嗣 札幌医科大学, 医学部, 名誉教授 (90199951)
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研究分担者 |
丹野 雅也 札幌医科大学, 医学部, 准教授 (00398322)
矢野 俊之 札幌医科大学, 医学部, 講師 (40444913)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ネクロプトーシス / 細胞死 / 細胞内シグナル伝達 |
研究実績の概要 |
1.ネクロプトーシスシグナルによるMLKLの核移行とネクロプトーシスとの関連:心筋症モデルマウスであるデルタサルコグリカン欠損マウスに認められるリン酸化MLKLの核移行の意義を解明のため、H9c2細胞を用いて検討した。その結果、ネクロプトーシスシグナル起動によってリン酸化MLKLは経時的に核にRan/importin 経路を介して移行し、その核移行はRIP1活性依存性であること、MLKLの核外移行シグナルは280-284アミノ酸領域に存在し、この領域の変異によって核内リン酸化MLKLレベルは上昇し、細胞死が増加することを明らかにした。この核内リン酸化MLKLよる細胞死は、RIP1、RIP3のいずれの活性にも依存していなかった。これらの結果より、核内リン酸化MLKLは細胞膜障害を誘導する細胞質リン酸化MLKLとは独立したネクロプトーシス促進機序であることが示唆された。 2.ネクロプトーシスシグナル起動による心筋介在版の形態変化と介在版構成蛋白の変化:免疫組織染色用に市販されているデスミン、デスモグレリン-2、カドヘリン、RIP1, RIP3それぞれに対する複数の抗体の特異性を心筋を含めた複数のマウス臓器で検討した。また、抗RIP1, 抗RIP3抗体の特異性については、L929細胞にネクロネクロプトーシスを誘導したサンプルのウェスタンブロットで解析した。検討した16種類の抗体のなかから、特異性に関する問題を確認した11種類を除外し、5種類について組織免疫染色の特異性を解析中である。なお、抗RIP1抗体では正常心筋組織が染色されなかったが、ウェスタンブロットでもRIP1蛋白はほとんど検出されないことから、ラット心筋とは異なりマウス心筋では生理的な条件ではRIP1の蛋白発現が低く、RIP1依存性のネクロネクロプトーシスを起こしにくい状態にあると推察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ネクロプトーシスシグナルならびに心筋介在版構成蛋白に対する抗体のうち、免疫組織染色用として市販されている抗体のうちの多くが特異性や染色性の点で、マウス心筋組織への応用に問題があることが、予備実験(各種臓器の組織免疫染色、マウス由来L929細胞サンプルのウェスタンブロット)で明らかになり、適切な抗体の選択に時間を要した。特にネクロプトーシスシグナルで重要な役割を仲介するRIP1, RIP3については、合計で12の抗体の特異性と組織染色性をマウス組織及び培養細胞で検討し、最終的に3種類の抗体の妥当性を確認するに至った。この間に平行して、リン酸化MLKLの核移行についてはラット心筋芽細胞を用いた実験を行って一定の成果を得た
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今後の研究の推進方策 |
今年度の実験の結果、ネクロプトーシスシグナルならびに心筋介在版構成蛋白の組織学的解析が可能な抗体を選択することが可能となっており、また海外の共同研究者より心筋細胞特異的RIP3ノックアウトマウスとその対照マウスの組織が提供される見込みである。こうしたことから最終年度はネクロプトーシスシグナル起動による心筋介在版の形態変化と介在版構成蛋白の変化についての研究が加速できる見込みである。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の予想に反して、これまで我々がラット心筋細胞を用いて行ってきた実験とは異なり、市販のマウスの心筋細胞のネクロプトーシスシグナル蛋白や心筋介在版構成蛋白に対する抗体(組織免疫染色用)の多くに特異性に問題があることが予備実験で明らかになり、組織染色実験を予定通り実施することができず、次年度使用が生じた。今後もリン酸化RIP3抗体の特異性については確認実験が必要だが、それ以外の抗体については至適条件も確認されたため昨年度の遅れを取り戻すことは可能である。
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