研究課題
胎生期の栄養状態や母体環境が成人期の心血管疾患罹患率に影響することは、胎児プログラミングとしてこれまでに報告されており、エピジェネティック修飾は心血管疾患や代謝疾患、悪性腫瘍の新たな治療法として注目されている。母体の高脂肪食摂取により、出生児の成人期にはマクロファージによる炎症反応によって動脈硬化の進展やインスリン抵抗性を引き起こすことが示されてきた。腹部大動脈瘤(AAA)は世界的に最も有病率の高い動脈硬化性疾患の一つであり、その発症はマクロファージの増加や炎症反応と密接に関係している。本研究では、高脂肪食を与えた母体由来マウス仔の、胎児プログラミングを介したマクロファージの破骨様細胞への形質変化が、AAAを増悪させるメカニズムについて解析を行った。本研究の結果より、母体の高脂肪食負荷が出生マウス仔の成体期におけるAAAの増悪に深く関与していることが示された。そのメカニズムとして、エピジェネティックな機序によりBMDMでのNFATc1の発現が促進されることで、破骨細胞様マクロファージへの分化が亢進する結果、MMPの発現が亢進していることが示唆された。本研究の成果は、胎児プログラミングによるマクロファージ形質変化の新たなメカニズムとしてH3K27me3を介したNFATc1の活性化に着目しており、AAAのみならず、出生マウス仔の心血管系疾患の進展を制御する新たな医療の構築に繋がる可能性を含有していると考えられた。
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件)
Cells
巻: 11 ページ: 732
10.3390/cells11040732.
巻: 10 ページ: 2224
10.3390/cells10092224.