研究課題/領域番号 |
21K08042
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研究機関 | 神戸薬科大学 |
研究代表者 |
佐々木 直人 神戸薬科大学, 薬学部, 准教授 (00514746)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 動脈硬化 / 炎症 / 免疫 |
研究実績の概要 |
(1)動脈硬化におけるCCR4の役割の解明 動脈硬化モデルApoe-/-マウス(アポリポ蛋白E遺伝子欠損マウス)とCcr4-/-Apoe-/-マウス、さらにCCR4阻害薬を用いて、動脈硬化の病態におけるCCR4の役割について検討した。Apoe-/-マウスにCCR4阻害薬の投与を行うことにより動脈硬化病変の形成が促進されたが、リンパ組織における免疫細胞の変化は認められなかった。Apoe-/-マウスと比較してCcr4-/-Apoe-/-マウスでは、全身のリンパ組織においてT細胞を介する炎症性免疫応答が亢進しており、動脈硬化病変の形成は有意に促進された。予想に反して、Ccr4-/-Apoe-/-マウスでは、全身の炎症促進性のエフェクターT細胞と炎症抑制性の制御性T細胞(Treg)の両方の細胞集団の増加を認めた。T細胞における活性化関連分子の遺伝子の発現についてフローサイトメトリーおよびリアルタイムPCRを用いて解析したところ、Ccr4-/-Apoe-/-マウスのTregでは明らかな変化を認めなかったが、Treg以外のT細胞において、それらの発現の上昇を認めた。 (2)動脈硬化抑制に有効なUVB波長の特定と抑制機序の解明 3種類の波長のUVB(X、Y、Z nm)を照射できる照射器を作製し、Apoe-/-マウスを用いて各波長のUVB照射による動脈硬化抑制効果とその機序について検討した。波長XのUVB照射により、大動脈基部動脈硬化病変の形成と炎症性免疫細胞の浸潤は抑制されたが、他の波長のUVB照射では変化を認めなかった。胸腹部の大動脈における動脈硬化病変の形成については、いずれの波長のUVB照射によっても抑制されなかった。波長XのUVB照射により、全身のリンパ組織における炎症抑制性Tregの増加を認めたが、他の波長のUVB照射では変化を認めなかった。他の免疫細胞については、すべての波長のUVB照射において明らかな変化を認めなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予備実験の結果に基づいて計画された研究は、予定通りに実行されている。
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今後の研究の推進方策 |
CCR4遺伝子の欠損による動脈硬化形成促進作用の機序を明らかにするために、免疫学的な機序に焦点を当てて検討を行う。特に、動脈硬化病変部に浸潤したエフェクターT細胞やTregを中心に解析を進める。大動脈瘤におけるCCR4の役割についても検討を開始する。 特定波長のUVB照射による動脈硬化抑制機序の解明のために、Tregを含めたT細胞を中心に、リンパ組織および動脈硬化病変部におけるこれらの細胞の局在を詳細に解析し、それらの活性化・機能に関連する分子の発現についても評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由:抗体などの消耗品費用に関して、予定より支出が少なかったため。
次年度の研究費の使用計画:研究費の使用計画としては、動物実験に使用する遺伝子組み換えマウスの維持管理費用、共同実験施設使用料、免疫染色およびフローサイトメトリーに用いる抗体の購入などを考えている。また、研究成果を報告するための学術集会参加費用、論文投稿費用などにも使用する予定である。
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