研究課題
(1)動脈硬化におけるケモカイン受容体CCR4の役割の解明動脈硬化モデルApoe-/-マウス(アポリポ蛋白E遺伝子欠損マウス)およびCcr4-/-Apoe-/-マウスを用いて、動脈硬化の病態におけるCCR4の役割について検討した。Ccr4-/-Apoe-/-マウスでは、大動脈への制御性T細胞(Treg)の遊走が抑制され、炎症性T細胞の浸潤増加と病変形成促進を認めた。それぞれのマウスからTregを分離し、別の動脈硬化モデルマウスに細胞移入を行い、動脈硬化抑制作用について評価した。Ccr4-/-Apoe-/-マウスのTregを移入したマウスでは、Apoe-/-マウスのTregを移入したマウスと比較して動脈硬化病変の形成は有意に促進されており、Tregによる動脈硬化の抑制においてCCR4は重要な役割を果たすことが示された。共培養実験により、TregはCCR4を介して炎症性T細胞の活性化を抑制する可能性を見出した。さらに、上記マウスを用いてアンジオテンシンⅡの持続投与により腹部大動脈瘤を形成させると、Ccr4-/-Apoe-/-マウスにおいて腹部大動脈瘤の形成は有意に抑制された。その一つの機序として、リンパ組織および大動脈組織中のヘルパーT細胞バランスの変化が関与する可能性を見出した。(2)動脈硬化抑制に有効な紫外線B波(UVB)の波長の特定と抑制機序の解明動脈硬化モデルマウスにおいて、282 nmの波長のUVB照射は、Tregを全身で増加させることで動脈硬化病変の形成を抑制した。このUVB照射により、Tregの免疫抑制能力は増強されることを見出した。さらに、質量分析を用いて皮膚の脂質代謝物の測定を行い、この波長のUVB照射により、皮膚における炎症性脂質代謝物の産生は抑制され、抗炎症性脂質代謝物の産生が増加することを見出した。以上の研究成果について原著論文として報告した。
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J Am Heart Assoc
巻: 13(2) ページ: e031639
10.1161/JAHA.123.031639.
https://www.kobepharma-u.ac.jp/edrs/faculty_member_list/medical_pharmaceutics.html