研究課題/領域番号 |
21K08050
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
坂本 陽子 大阪大学, 大学院医学系研究科, 特任助教(常勤) (30444053)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 重症心不全 / 栄養管理 / 安静時消費エネルギー / 必須アミノ酸 / ヒスチジン |
研究実績の概要 |
心臓移植適応のある重症心不全患者が多く占める当院入院患者72名において安静時消費エネルギーを測定し、汎用されている必要エネルギー量の推定式との比較を行った。また安静時消費エネルギーを規定しうる因子として、心不全重症度と関連する指標や強心薬点滴の有無との関連について解析した。この結果、推定式では必要エネルギー量は過小評価されることが明らかとなり、これは低体重群の患者で著明であった。また心不全重症度を示すパラメーターや強心薬点滴の有無と安静時消費エネルギーとの間には関連は認められなかった。さらに、摂取エネルギーと必要エネルギーのエネルギーバランスを見るためのbiomarkerとして、蓄尿中のヒスチジン排泄量が有用である可能性について見出した。これらの内容について現在論文投稿中であり、今後日本臨床栄養代謝学会でも発表予定である。 また、心不全入院患者および植え込み型補助人工心臓装着術後、心移植後の患者100名において、欠乏している栄養素について探索的に評価を行ったところ、血中ビタミンC低下症(2.0-5.5ug/ml)が36名(36%)、ビタミンC欠乏患者(<2.0ug/ml)が13名(13%)と、両者併せると半数程度がビタミンCの低下を認めており、食事からのビタミンC摂取量が十分であっても血中濃度が低下している症例も多いことから、どういった要因で低下が起きるのかについて検討を行っている。またビタミンC欠乏により、出血や創傷治癒遅延などがおきることが知られており、補充の必要性がある患者群の抽出や補充方法についても検討を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでのデータについてはまとめて論文投稿を行えている。また新しいテーマについてのデータも順次収取している。
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今後の研究の推進方策 |
心不全患者において、不足する可能性のある栄養素について、特に微量元素に注目して新たな症例のデータを収集して解析を進めていく予定である。ビタミンCについては、欠乏により出血および創傷治癒遅延の弊害があることが知られ、特に周術期には問題になると考えられる。術前のスクリーニングおよびビタミンC補充が術後出血や創傷治癒遅延のリスク軽減になりうるかについて、ビタミンC術前投与有無による比較試験を計画する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度中の投稿論文のアクセプトを見込んで掲載料等分に充当する予定であったが、遅延している。今年度中にアクセプトを見込んでいる。またビタミンC補充についての臨床研究計画の立案を今年度に予定しており、倫理委員会申請費用およびサンプル解析費用として使用することを予定している。
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