本研究は、心筋のリアノジン受容体(RyR2)結合カルモジュリン(CaM)が、心不全、心肥大の進行に関するkey分子となることを証明し、心不全、心肥大に対する、これまでに無い治療法を確立することである。 1)RyR2からのcalmodulin(CaM)解離抑制による肥大制御 申請者はRyR2のCaM結合ドメイン(CaMBD)に1アミノ酸変異を組み込んだ変異ペプチドを多数スクリーニングした結果CaMの結合親和性が著しく高まるアミノ酸変異を発見した。この知見をもとに、RyR2上のCaM結合ドメイン内で1アミノ酸のみを変異させることによりCaMの結合親和性が格段に高まる変異を組み込んだknock-in (KI)マウス: (RyR2 V3599K KIマウス)を作成することに成功した。このマウスを7%の低酸素下で飼育したところ、WTマウスでは明らかに心肥大、心筋細胞肥大を生じたにもかかわらず。RyR2 V3599K KIマウスではまったく肥大を生じなかった。 2)ラット心筋由来のH9C2細胞において、Ang IIは,CaMの核内移行および細胞質Ca2+の上昇を伴って,H9C2細胞の肥大を誘発したが、RyR2を安定化させ、CaMの解離を抑制するダントロレンの添加はCaMの核内移行および細胞質Ca2+の上昇を阻害し,Ang II誘発肥大を抑制した。一方で、Herpud1の過剰発現は,CaMの核内移行および細胞質Ca2+の上昇を妨げることなく,Ang IIによる細胞肥大を抑制した。
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