研究課題
加齢性筋肉減弱症 (以下サルコペニア: Sarcopenia) は、寝たきりや要介護状態につながる転倒の原因として近年注目されるようになった病態である。サルコペニアの成因として、加齢、運動不足や低栄養、ホルモン低下や慢性炎症、インスリン抵抗性などの代謝異常などが考えられているが、未だ不明な点が多い。サルコペニアを合併する患者と高い入院率・死亡率、高額の医療コストとの関連が指摘されている。サルコペニアを高頻度に合併する病態として下肢閉塞性動脈硬化症 (PAD: peripheral arterial disease) が挙げられる。PADでは下肢動脈血流量の減少により、下肢筋肉の虚血、そして間欠性跛行や重症虚血肢を生じるが、血行不全に伴い骨格筋量や強度の低下を来たし、サルコペニアを合併する。近年低侵襲に施行可能な血行再建として血管内治療が多くのPAD患者に施行されているが、血管内治療を行うことで下肢血流が改善し、間欠性跛行が改善することが多い。しかし血管内治療後に活動量、骨格筋量や筋肉強度がどのように変化するのか、 これまで明らかにされていない。本応募研究では奈良県立医科大学付属病院に入院する新規PAD患者300症例について、血管内治療前後の血中の炎症マーカー、活動量、筋肉量、筋肉強度を計測し、血行再建後のパラメータの変化を前向きコホート研究を予定しているが、コロナ感染による新規患者の減少により、前向きデータ集積は計画より遅延している。また採血によるバイオマーカー測定は想定以上のコストが発生することが判明し、見送ることとした。本学でこれまでに1200例の治療前腹部-下肢動脈CT画像とPAD治療予後のデータセットを有しており、後ろ向きコホート研究として治療前の筋肉量と動脈硬化リスク因子との関連、また心血管イベント発生率及び生命予後との関連について併せて検討する予定であるが、こちらはこれまで300例のデータ集積をおこなっている。
3: やや遅れている
コロナ感染者増加により、通常診療用のベッド数が抑制されているため、前向き研究の登録は遅延している。後ろ向き研究のデータ集積に関しては補助研究員の支援のもと、順調に進んでいる。
前向き、後向きデータ集積を補助研究員の協力のもと継続して進めていく。
バイオマーカーの測定が想定以上にコストがかかることが判明し、見送ることにしたため。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件)
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10.1177/1526602820963932.
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10.1016/j.jcin.2021.03.030.