研究課題
全身麻酔下、人工呼吸器管理により52頭のブタ心筋梗塞モデルを作成した。左右大腿動脈、右大腿静脈、右頚静脈に7Frシースイントロデューサーを挿入し、それぞれから、右冠動脈、左冠動脈、左肺動脈、冠静脈洞にカテーテルを挿入した。右冠動脈への5FrJR3.5、左肺動脈へのスワンガンツカテーテル、冠静脈洞への7Frアンギオバーマンカテーテルは全例挿入可能であったが、左冠動脈は解剖学的な個体差から、JR3.5、IM1.0、AL0.75から適切なものを選択し、全例挿入可能となった。先行研究を参考に抗不整脈薬、ノルアドレナリンを投与するも、研究当初は、高率に心室細動で死亡し、研究を完遂できなかったため、以下の改善を行った。1.体温管理、2.血糖管理、3.肺動脈圧・動脈圧管理、4.抗不整脈薬、5.冠動脈閉塞部位の変更、以上の対応により、実験開始から28頭目までの実験完遂率は50.0%(14/28頭)であったが、前述の対応が定着した29頭目から52頭目では83.3%(20/24頭)と著明に改善した。また、冠静脈採血も行ったが、本実験により、冠静脈開口部もヒトと異なることを発見した。冠静脈採血目的に、7Fr.アンギオバーマンカテを冠静脈洞に挿入するが、その前に、左前下行枝を造影して冠静脈開口部を確認した。多くの個体で奇静脈が大心静脈に合流しているため、純粋な心筋静脈血を採取するためには、奇静脈の合流部を越えてカテーテルを進める必要があった。また、7.4%(2/27頭)で、左前下行枝から続く冠静脈が冠静脈洞より上方の右房に直接開口していた。これらは、その開口部にカテーテルを挿入し採血した。以上の経緯により、予定の実験はすべて終了した。梗塞範囲の測定は、今後、病理標本作成により行い、統計解析後、論文作成および投稿予定である。