研究課題/領域番号 |
21K08071
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
山澤 弘州 北海道大学, 大学病院, 医員 (10421976)
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研究分担者 |
武田 充人 北海道大学, 大学病院, 講師 (00374413)
横田 卓 北海道大学, 大学病院, 特任講師 (90374321)
矢部 一郎 北海道大学, 医学研究院, 教授 (60372273)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 筋ジストロフィー / ミトコンドリア / 末梢血単核球 / バイオマーカー |
研究実績の概要 |
筋ジストロフィーはいまだ根本的な治療法が見つかっていない難治性の遺伝性疾患である。初発の症状は骨格筋障害による運動機能低下であるが、病状の進行に伴い多臓器障害および全身の代謝異常を来たし、終末期には生活の質 (QOL) の著しい低下により寝たきり状態となり、多くは心不全または致死性不整脈により死亡する。この筋ジストロフィーの臨床像は骨格筋・心筋障害を主症状とするミトコンドリア病と多くの点で類似している。これまでにも筋ジストロフィーの発症・進展にミトコンドリア機能障害が関与している可能性が示唆されていたが、ヒトの骨格筋や心筋から組織を採取しミトコンドリア機能を直接 測定することは侵襲性の面で困難であり、十分に検証されてこなかった。 そこで本研究の最終目的は侵襲の少ない末梢血単核球(PBMC)を用い、『筋ジストロフィーの進展にはPBMCミトコンドリア機能異常が関わっており、骨格筋障害のみならず心筋障害などの多臓器不全に関与する』という仮説を検証することにある。 仮説が正しいなら筋ジストロフィーにおいて実際PBMCミトコンドリア機能異常がある事を証明することがまず第一歩になる。下記の進捗に示す通り対象者のリクルートは概ね順調に進んでおり、結果の詳細はここでは控えさせて頂きたいが、測定も順調に進んでいる。 更に骨格筋機能や画像による心機能、心筋障害評価結果との関連性の検討を現在進行形で進めている。統計学的な解析結果はここでは控えさせて頂きたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要で述べた目的達成には以下の具体的目標の達成を目指す必要があり、進捗も下記に示す通りである。 ①筋ジストロフィー患者でPBMCミトコンドリア機能は低下しているか?、ミトコンドリア病患者と比較するとどの程度PBMCミトコンドリア機能が低下しているか?→結果の詳細は控えさせて頂きたいが対象者リクルートは概ね順調に進んでおり、計測も全例順調に進捗している。②PBMCミトコンドリア機能障害は、骨格筋機能低下と関連があるか?→対象者全例の骨格筋評価を終えている。今後数値化し、ミトコンドリア機能との関連を検討する。③PBMCミトコンドリア機能障害は、心筋障害を含む多臓器障害の出現と関連があるか?→現在解析を進めているところである。④PBMCミトコンドリア機能障害は、QOL低下と関連があるか?→対象者のQOL評価のためのアンケートを収集済み。数値化のための関数を組み終わり、現在数値化しているところである⑤PBMCミトコンドリア機能障害は、全身の炎症マーカーと相関するか?→外注にて測定依頼予定なので未だである。⑥PBMCミトコンドリア機能障害は、全身の酸化ストレスマーカーと相関するか?→測定はほぼ終わっているが結果は控えさせて頂く。⑦筋ジストロフィー患者では、PBMCミトコンドリアDNAコピー数などミトコンドリア量の指標は減少しているか?→これに関してはまだ進めていない。現在指標として実行可能性があり、十分信頼性のおける指標を選定している。
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今後の研究の推進方策 |
元々予定している研究計画内容自体はこのまま進めれば遂行出来ると判断される。 その先の展開だが、仮説が証明された場合PBMCミトコンドリア機能を改善させることで筋ジストロフィーの病態を改善させるという、全く新しいコンセプトに基づく筋ジストロフィーの治療戦略が見えたことになる。このPBMCミトコンドリア機能を改善させることによる治療 は現在の所、他の病態において既に心筋細胞のミトコンドリア機能を改善させることに研究分担者、協力者、共同研究者らが成功しており、動物モデルを含めた基礎実験などは必要になると考えられるものの実現できる可能性があるものと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
現在までのところほぼ大学施設内の器具を用いて行っている研究になるが、消耗品が在庫分で対応できる物品が多く、請求を要しなかった。令和4年度は研究計画上外注での検査項目が多くなるため、それに備える意味でも次年度使用とした。
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