研究課題/領域番号 |
21K08072
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
貞廣 威太郎 筑波大学, 医学医療系, 講師 (60571130)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 心筋再生 / 血液細胞 / ダイレクトリプログラミング |
研究実績の概要 |
本研究では、線維芽細胞を用いた心筋再生研究で培ったリプログラミング技術を応用し、安全に採取可能な血液細胞から心筋細胞を作り出すことを目的とする。この目的達成のため、ヒト血液細胞への安定した遺伝子導入方法、ならびに導入後の細胞の培養条件の検討を行った。ベクターとして臨床応用も可能な、安全かつ、高効率な遺伝子導入が可能なセンダイウイルスベクターを使用し、蛍光蛋白(GFP)導入効率を指標とした予備実験を行った。遺伝子導入には血液細胞の活性化が必要であることを明らかにしただけでなく、細胞毒性による細胞死を惹起しない適切なタイターを設定した。FACSによる定量評価の結果からは、血液細胞への遺伝子導入効率は90%以上と従来のウイルスベクターを用いた導入効率と比較しても良好な結果であった。さらに遺伝子導入後の細胞を培養皿上に接着させるためには、血液細胞から適切な分化だけでなく、培地への適切な化合物の添加などの条件が必要であることを発見した。適切な条件で培養を継続することで、リプログラミング遺伝子を導入した血液細胞は、遺伝子導入後2週間を経ることで、血液細胞の特徴である球状の形態から、心筋細胞様の紡錘形へと変化した。心筋構造蛋白の免疫染色の結果、リプログラミング遺伝子が導入された細胞では、心筋細胞に特徴的な構造タンパク質であるαアクチニンを発現していることが明らかとなり、血液細胞から心筋細胞へのリプログラミングが起きたことが示唆された
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
最大の課題であった血液細胞への適切な遺伝子導入方法、ならびに培養皿上への接着が可能な培養条件の確立に成功した。また、これまで線維芽細胞を用いた心筋直接リプログラミング研究で培った知見を応用し、血液細胞から心筋細胞への誘導に必要なリプログラミング因子の選定にも成功した。
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今後の研究の推進方策 |
一部の血液細胞から心筋細胞が誘導された可能性が示されたが、誘導効率は線維芽細胞からの心筋細胞誘導と比較し、低値であった。この原因として、心筋リプログラミング遺伝子を個別のセンダイウイルスベクターに搭載して血液細胞に感染させるため、リプログラミングに必要な全ての遺伝子が完全に導入された細胞の割合が十分でない可能性が考慮された。そこで、すべての遺伝子が一つのベクターに搭載されたポリシストロニックベクターを開発することとした。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19によって当院のドック受診者が激減したために、実験に必須の血液細胞の入手が停止してしまった。そのため、予定していた実験量が遂行できず、当初の予定よりも試薬代を中心とした消耗品費が低くなってしまった。COVIDの状況が改善し、ドック受診者が増加する事が見込まれる本年度に、この差額を使用することを計画する。
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