研究課題/領域番号 |
21K08074
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
中村 牧子 富山大学, 学術研究部医学系, 助教 (80860262)
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研究分担者 |
今村 輝彦 富山大学, 学術研究部医学系, 准教授 (80746652)
絹川 弘一郎 富山大学, 学術研究部医学系, 教授 (00345216)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 後天性フォンビルブランド症候群 / 機械的補助循環 / 心原性ショック / 血管新生 / 右心不全 |
研究実績の概要 |
連続流型ポンプの植込型補助人工心臓患者において血清アンジオポエチン2の上昇と消化管異形成が観察され、また植込型補助人工心臓患者において消化管出血の合併症が多いこと、また重症心不全でもアンジオポエチン2は上昇し、心不全患者の予後予測マーカーであることが過去に報告されています。 本研究の目的は、補助人工心臓患者における消化管出血発症のメカニズムとアンジオポエチン2の関連を明らかにすることですが、2022年度は微小軸流ポンプを内蔵する経皮的補助人工心臓であるIMPELLAを含む短期的補助循環装置による治療を要した重症心不全・心原性ショック患者におけるアンジオポエチン2の推移と短期予後(30日予後)について調査・報告しました。IMPELLA開始後のアンジオポエチン2高値は、30日予後不良と有意な関連がみられましたが、死因の最多は敗血症、次いで多臓器不全で、全患者の21%で消化管出血の発症はありましたが、IMPELLA開始後のアンジオポエチン2高値と消化管出血の発症には有意な関連は認められませんでした。IMPELLAでは消化管出血より先にデバイス刺入部出血の合併症が多く、死亡例では有意に輸血量が多く、大出血および輸血施行例では免疫能が低下し敗血症を併発している可能性が考えられました。 また、連続流型植込型補助人工心臓患者で下部消化管出血による高度貧血で緊急入院となった例が1例おりましたが、その際アンジオポエチン2は上昇しておらず、必ずしもアンジオポエチン2高値が消化管出血を引き起こすのではない可能性が示唆されました。 今後は機種が異なる連続流型補助人工心臓患者を含めて、引き続き定期的なアンジオポエチン2の測定およびフォンビルブランド因子マルチマー解析を行い、臨床背景との関連や、消化管出血発症時は内視鏡検査も行い肉眼的および病理学的考察も検討できればと考えています。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
微小軸流ポンプによる経皮的補助人工心臓(IMPELLA)を含む短期的循環補助を行った例においては、補助開始後のアンジオポエチン2高値は30日予後不良と有意な関連があったが、消化管出血発症との有意な関連は見られなかったこと、植込型補助人工心臓装着患者で下部消化管出血発症患者1例で、イベント発症前および発症時にアンジオポエチン2の上昇は見られなかったことから、アンジオポエチン2高値は、炎症や血管新生マーカーではあるものの、消化管出血の発症と直接的な関係はない可能性も示唆された。いつ消化管出血が発症するのかは現時点では予測困難であるため今後もデータを蓄積し、病態・メカニズムについて検討する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
植込型補助人工心臓患者でこれまでに測定したアンジオポエチン2の増減に関する因子や、消化管出血発症の原因として他に報告されている後天性フォンビルブランド症候群の重症度を示唆するフォンビルブランド因子マルチマー解析結果との関係を引き続き調べて、消化管出血発症のメカニズムとアンジオポエチン2上昇の関連について検討する。また植込型補助人工心臓装着患者において脈圧の程度とアンジオポエチン2、消化管出血の発症との関連についても検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年度に植込型補助人工心臓装着患者で消化管出血イベントがあったが、その直前および発症時にアンジオポエチン2の上昇がなかったため、当初想定していた仮設がことなる可能性があり、引き続きデータの蓄積が必要である。今後もアンジオポエチン2測定のためのキット購入と、フォンビルブランド因子マルチマー解析のための外注検査費用が必要である。
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