研究課題/領域番号 |
21K08075
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
林 研至 金沢大学, 保健学系, 准教授 (00422642)
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研究分担者 |
吉田 昌平 金沢大学, 附属病院, 助教 (30623657)
野村 章洋 金沢大学, 附属病院, 特任准教授 (30707542)
藤野 陽 金沢大学, 保健学系, 教授 (40361993)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ゼブラフィッシュ / VUS / 遺伝性不整脈症候群 |
研究実績の概要 |
R4年度はまず拡張型心筋症(DCM)50症例の網羅的遺伝子解析を行った。DCMの約20~30%は家族性と考えられており、約50種類の遺伝子バリアントが関連遺伝子として報告されている。そのうち、タイチン遺伝子(TTN)truncating variantやラミンA/C遺伝子(LMNA)変異は病的意義が高いと考えられる。網羅的遺伝子解析の結果、10種類のTTN truncating variantsを見出し、1種類のLMNA変異(ナンセンス変異)を見出した。その他、上記以外のDCM既知関連遺伝子のtruncating variants10種類と新規関連遺伝子のtruncating variants14種類を見出した。TTNとLMNA以外の遺伝子のtruncating variantsの多くはVUSと考えられた。 次に肥大型心筋症(HCM)60症例の網羅的遺伝子解析を行った。HCMの約25~40%の症例がサルコメア遺伝子の変異によって発症するとされている。HCMの主要原因遺伝子は11種類であり、MYH7、MYBPC3の変異が多数を占めており、ついでTNNT2、TNNI3、TPM1、MYL3などのサルコメア遺伝子変異が続く。網羅的遺伝子解析の結果、HCM60症例において、MYBPC3の病的バリアント10種類、MYH7の病的バリアント8種類、その他の主要サルコメア関連遺伝子の病的バリアント9種類を見出した。さらに主要サルコメア関連遺伝子以外の20遺伝子に25種類のtruncating variantsを見出した。 現在、心筋症の新規関連遺伝子あるいは発生機序不明の既知関連遺伝子のtruncating variantsの病的意義を明らかにするため、ゼブラフィッシュを用いて機能解析を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
LQTSの原因遺伝子であるKCNQ1のゼブラフィッシュのホモログ遺伝子のホモ接合性変異体を作成し、これを用いてヒトで見つかったKCNQ1のVUSを評価して論文報告した。現在、先天性QT延長症候群の原因遺伝子のひとつであるKCNH2のホモ接合性変異体を作成中である。また、心筋症(DCMおよびHCM)で見いだされた新規関連遺伝子、あるいは発生機序不明既知関連遺伝子のtruncating variants5種類について、ホモ接合性変異体を作成中である。このように本研究はおおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
LQT1で見いだされたVUSの意義を明らかにするため、本研究で作成したゼブラフィッシュkcnq1ホモ接合性変異体を用いて機能解析を行う。
LQT2で見いだされたVUSの意義を明らかにするため、ゼブラフィッシュkcnh2ホモ接合性変異体を作成する。
心筋症(DCMおよびHCM)で見いだされた新規関連遺伝子、あるいは発生機序不明既知関連遺伝子のtruncating variants5種類について、ホモ接合性変異体を作成する。作成した変異体の心電図測定、心臓の活動電位測定、光学顕微鏡下での心房・心室の拍動観察(心拍数、規則性などを評価)および心機能評価(心内径、心内径短縮率など)、光学マッピング(刺激伝導速度を測定)を行う。さらに、ゼブラフィッシュホモ接合性変異体の心臓よりRNAサンプルを抽出しRNA-Seq解析を行い、トランスクリプトーム解析を行う。パスウェイ解析による包括的な解析を行い、発症機序をもとに治療標的分子を探索し、変異遺伝子の機能を調節する薬剤を決定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入希望の物品費が予算額を上回っており、翌年度の研究経費と併せて使用することにしたため。
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