研究課題
2005年~2017年に岐阜大学医学部附属病院で施行された心筋生検症例から拡張型心筋症(DCM)に起因する心不全症例を抽出し分類・整理した。追跡可能であった症例の中で、心エコー検査結果を後ろ向きに解析し左室リバースリモデリング(LVRR)に成功した症例とLVRR不成功の症例、各21症例を抽出した。また心機能正常のコントロール症例として不整脈、サルコイドーシス疑い、軽度肥大型心筋症症例より7症例を抽出した。LVRRの成否においてベースラインの臨床的パラメーターの比較ではLVRR不成功群では肺動脈血楔入圧が高く、β遮断薬の処方が多く見られた。DCM心筋生検病理において一般病理検索では心筋細胞径、線維化率、心筋細胞変性、核異型を比較したが有意差はみられなかった。電子顕微鏡観察を行ったところDCM症例では心筋線維の粗鬆化に加え多数のオートファジー空胞(オートファゴソーム、オートリソソーム)が見られた。そこでオートファジーに関する所見に注目した。LVRRに成功した群ではオートファジー空胞が多数見られその中でオートリソソームの割合が大きくリソソームが多数見られた。一方でLVRR不成功群ではオートリソソームの割合が少なくオートファジー空胞のサイズは大きかった。次にパラフィン切片を用い、オートファジー空胞とリソソームのマーカーとしてLC3、カテプシンDの免疫染色を行い、定量評価を行った。LVRR成功群はLVRR不成功群と比較しオートファジー空胞の数が多く、リソソームの発現が高かった。オートファジー空胞の数とリソソーム発現に対しロジスティック回帰分析をLVRRについて行なったところオッズ比は各々1.02(95% CI:1.00-1.04、P =0.013)、2.1(95% CI: 1.23-3.57、P=0.006)であった。オートファジーの状態はLVRRの予側因子となることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
ヒト拡張型心筋症の心筋生検標本の解析から一般病理ではリバースリモデリング(LVRR)の予測はできなかった。一方、超微形態ではLVRRが成功した群ではオートファジー活性が高いことが予測された。さらに免疫染色を用いた検討ではオートファジーのマーカーであるLC3陽性の粒(オートファジー空胞)の数、カテプシンDの発現強度はLVRRの予後予測因子となることが明らかとなった。心筋生検検体を用いた臨床研究でヒト不全心においてオートファジーの重要であることが明らかとなった。
オートファジーの活性化が拡張型心筋症においてLVRRをもたらすことがこれまでの研究から示唆されていた。LVRRは拡張型心筋症以外の心筋疾患でも観察される現象である。今後は心不全動物モデルを用いオートファジーの活性化が期待できる薬剤の効果を調べる。
予想していた消耗品や機器が今年度は壊れず使用できたため購入しませんでした。今後買い替えが必要となります。また動物実験が予定より遅れているため抗体購入、試薬の購入が遅れています。これらを次年度に繰り越します。
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JOURNAL OF THE AMERICAN COLLEGE OF CARDIOLOGY
巻: 79 ページ: 789-801
10.1016/j.jacc.2021.11.059.