心筋生検症例から拡張型心筋症に起因する心不全症例を抽出し、追跡可能であった症例の中で心エコー検査結果を後ろ向きに解析し左室リバースリモデリング(LVRR)に成功した症例と不成功の症例を各21症例調べた。一般病理では心筋細胞径、線維化率、心筋細胞変性、核異型を比較したが有意差はみられなかった。一方で電子顕微鏡観察を行ったところLVRR成功例では核異型や心筋線維の粗鬆化に加えオートファジー空胞(オートファゴソーム、オートリソソーム)が多数見られたことからオートファジーの関与が考えられた。そこで組織的に広範囲に定量評価を行うためパラフィン切片を用い、オートファジー空胞とリソソームのマーカーとしてLC3、カテプシンDの免疫染色を行った。LVRR成功群はLVRR不成功群と比較しLC3の数が多く、カテプシンの発現が高かった。ロジスティック回帰分析を行ったところオートファジー空胞の数とリソソーム発現のLVRRにおけるオッズ比は各々1.02(95% CI:1.00-1.04、P =0.013)、2.1(95% CI: 1.23-3.57、P=0.006)であった。つまりオートファジー活性が高い方がLVRRしやすいことが分かった。次にSGLT2阻害剤(Empagliflozin)を用い大型陳旧性心筋梗塞による心不全モデルマウスを用い前向きにオートファジーがリバースリモデリングに関与するかを調べた。本モデルマウスに4週間本薬剤を投与したところ偽薬群に比較し左室収縮能の改善と左室径の収縮がみられた。心・体重比は低下し組織学的にも心筋線維化や心筋細胞肥大が抑制されLVRRがみられた。偽薬手術群は偽薬偽手術群と比較しLC3とカテプシンDの発現が増加していた。Empagliflozinを投与した手術群ではさらなる増加がみられオートファジーの活性化がリバースリモデリングに関与したと考えられた。
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