研究課題/領域番号 |
21K08081
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
宇都宮 裕人 広島大学, 医系科学研究科(医), 助教 (10778492)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 心房細動 / 三尖弁閉鎖不全症 / 僧帽弁閉鎖不全症 / 三次元経食道心エコー |
研究実績の概要 |
心房細動症例で三次元経食道心エコーを施行した症例のデータベースから後ろ向き検討を施行した。中等度以上の三尖弁逆流を有する症例の中で,持続性心房細動に起因する心房性三尖弁逆流(atriogenic tricuspid regurgitation: AF-TR)が48症例で認められた。AF-TR群と,同数の年齢,性別,体格,逆流重症度をマッチさせた洞調律下での心室性三尖弁逆流(ventriculogenic tricuspid regurgitation: VF-TR)を比較検討した。AF-TR群においては,弁輪拡大,中でも後尖付着長の延長が逆流の重症度および逆流縮流部の後方への伸展に関連していることを見出し,論文化を施行した(Journal of the American Society of Echocardiographyへ掲載予定)。 さらには,64例の超重症三尖弁閉鎖不全症について,その予後因子を後ろ向きに検討した。経食道心エコーで三尖弁を含む3Dデータを取得し,収縮中期の接合ギャップについて三次元的に計測した(3D anatomical regurgitant orifice area: 3D-AROA)。運動負荷心エコー図検査から,右室収縮予備能の指標として三尖弁輪収縮期移動距離と推定収縮期肺動脈圧の労作時変化率(TAPSE/SPAP slope)を計測した。平均559日のフォローアップ期間で20例(31%)が死亡した。多変量解析にて,全死亡に関連した因子は,大きな3D-AROA (3D-AROA 161mm2以上)および低いTAPSE/SPAP slope (TAPSE/SPAP slope 0.046 mm/mmHg以下) であった。超重症のゾーンにおいては,逆流重症度と共に右室予備能を念頭に治療戦略を考えていく必要性があることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
心房細動症例で三次元経食道心エコーを施行した症例のデータベース整備は順調に進んでいる。後ろ向き検討から,心房性機能性三尖弁閉鎖不全症の機序に関する検討を行い,論文化を行った。さらに前向き多施設研究の実施に向けて,研究プロトコルの作成が完了し,現在倫理委員会の審査を受けている。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き,データベースからの後ろ向き検討項目として,心房性機能性僧帽弁閉鎖不全症の多様な機序を明らかにすべく解析を進める。三尖弁については,心房細動罹病期間と弁輪形態の変化の関連について,発作性心房細動と持続性心房細動群に分けて精査を進めていく予定としている。さらには,経カテーテル的心筋焼灼術による洞調律化が弁輪および心房のリバースリモデリングをもたらすかに関する前向き多施設研究の実施に向けて進めていく。
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