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2021 年度 実施状況報告書

たこつぼ症候群の発症メカニズム解明を通じた新規心不全治療ターゲットの探索

研究課題

研究課題/領域番号 21K08084
研究機関奈良県立医科大学

研究代表者

尾上 健児  奈良県立医科大学, 医学部, 講師 (90510173)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワード心不全 / たこつぼ症候群 / 交感神経シグナル
研究実績の概要

超高齢社会を迎える我が国において、全ての心疾患の終末的病態である心不全患者数は増加の一途にあり、心不全の病態評価や予後予測とともにより効果的な治療法を探索することが喫緊の課題となっている。心不全患者では交感神経活性が亢進しており、カテコラミン濃度が高い患者ほど予後不良であるため交感神経活性が予後規定因子とされる。すなわち交感神経系シグナルの調整が新たな心不全マネージメント法となり得る。
交感神経活性が強く関与する疾患として、急性心不全で発症するたこつぼ症候群(TTS)がある。TTSは一過性の心収縮能低下を特徴とする疾患群で、閉経後の高齢女性に好発し、身体的・精神的ストレスを背景として急性冠症候群に類似した症状で突然発症する。その機序については多枝冠動脈攣縮説、急性冠微小循環障害説、急性カテコラミン毒性説などが考えられている。このうちカテコラミン毒性による心臓交感神経系障害およびそれに引き続く心筋収縮不全は、最も有力な発症機序と考えられているが、実際の症例においてこれら交感神経系の障害・関与を直接証明した研究はなく、病因論も確立されていなかった。我々はTTS発症急性期の心筋生検組織を用いて、交感神経系シグナル制御因子であるGRK2やβアレスチン2の発現がTTS患者心筋で亢進するとともに、これら分子が細胞膜に移行し、β受容体の脱感作を起こしている可能性を示唆する所見を観察し発表した(Scientific Report 8:12731, 2018)。本研究ではこれらの知見に基づき、TTSモデルマウスを作製し、それを用いてTTS発症機序をより詳細に解析し、また薬剤による交感神経系シグナルの調整機構を検討する。最終的にはTTSのみならず、心不全全般の治療にも応用可能な病態に即した心不全マネージメント法を検討する。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究では、我々がすでにヒト臨床検体を用いてTTSの病態に関与することを明らかにしたGRK2やβアレスチン2等のTTS関連分子の心筋細胞における発現調整マウスを作製して、カテコラミン刺激によるβアドレナリン受容体シグナル関連分子の動態におよぼす影響を、正常コントロールおよびDCMモデルマウスとの比較検討を通じて解析する計画である。
初年度は、AAVベクターを用いてGRK2をマウス心筋で高発現させるTransgenic (TG)モデル作成のためのベクター作成を行うとともに、野生型マウスに対するカテコラミン投与を行い、TTSを発症する条件検討を行った。ベクターは予定通り作成できており、TTS発症の条件検討も順調に進んでいる。

今後の研究の推進方策

第二年度以降は、GRK2を心臓で過剰発現させたマウスを用い、野生型マウスとのTTS発症条件の違いを検証する。
具体的には、これら過剰発現モデルマウスおよび野生型マウスにカテコラミンを腹腔内投与し、心臓でのPKAシグナル等のβアドレナリン受容体シグナルカスケードにおよぼす影響、ならびに心機能や全身血圧におよぼす影響を、野生型マウスとの比較検討を通じて検証する。また、心エコーによる心機能評価、蛋白および遺伝子の発現解析、および免疫染色による組織学的評価等で蛋白発現調整動物の野生型に対する反応性の違いを検証し、たこつぼ症候群におけるこれら分子の役割を検証する。遺伝子発現に関しては、RNAシーケンスにより網羅的に解析し、直接的なβアドレナリン受容体シグナル関連分子以外に何らかの経路が影響を受けていないかも検証する。

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公開日: 2022-12-28  

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