ペースメーカー細胞を標識するためにヒトiPS細胞のHCN4遺伝子下流にtdTomato遺伝子を導入したHCN4レポーター遺伝子細胞株を樹立し、さらに別のペースメーカー細胞特異的な遺伝子下流にも蛍光レポーター遺伝子を導入したが、ペースメーカー細胞の誘導効率が低いためか蛍光発現が一定でなかったため、HCN4の発現と心筋細胞成熟化の関連について研究した。
HCN4レポーター遺伝子導入ヒトiPS細胞から心筋細胞を分化誘導し、長期培養と成熟プロトコルを組み合わせて心筋細胞の成熟化を試みた。実験に用いた心筋細胞は、通常培養で40日と60日間、成熟プロトコルで40日とその後60日まで長期培養して作製した。これら4群に対してHCN4の発現を評価し、心筋細胞の成熟度との相関を比較検討した。 フローサイトメトリーや蛍光顕微鏡によるレポーター蛋白の発現解析とRNA発現解析及び電気生理学的解析において、通常培養(40日間)に対して長期培養や成熟プロトコルを用いることでHCN4の発現が減少し、心筋細胞の成熟度とHCN4発現は逆相関した。一方、細胞サイズやRNAの成熟マーカーの発現から最も成熟したのは成熟プロトコルで長期培養した心筋細胞であった。しかし、長期培養と成熟プロトコルそれぞれ単独と比較して、両方を組み合わせても、HCN4の発現を減少させる相乗効果はなかった。 以上の結果から、多能性幹細胞由来心筋細胞におけるHCN4発現低下には、心筋成熟のみならず、心筋成熟以外の因子が関与していることが示唆された。
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