研究課題/領域番号 |
21K08105
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
小林 成美 神戸大学, 医学部附属病院, 特命准教授 (20379415)
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研究分担者 |
杜 隆嗣 神戸大学, 医学研究科, 特命准教授 (50379418)
長尾 学 神戸大学, 医学研究科, 助教 (70866029)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | グルタミン分解 / グルタミン代謝 / 心臓リモデリング / 心不全 |
研究実績の概要 |
1) 不全心筋におけるグルタミン代謝制御機構を解明する 当初予定していた大動脈縮窄術による心不全モデルの実験系の結果にバラつきが大きく、動物モデルとしての安定した結果が得られなかったため、代替的にAngiotensinⅡの持続皮下投与による心肥大モデルを用いた検討を行った。AngiotensinⅡを投与したマウスの心臓組織ではグルタミン分解において、グルタミンからグルタミン酸への変換を触媒する酵素であるグルタミナーゼ1(GLS1)の発現がAngiotensinⅡ群で有意に増加していた。また、心肥大を心重量/体重比(mg/g)および心重量/脛骨長比(mg/mm)で評価したところ、いずれもAngiotensinⅡで有意に増加し、GLS1阻害薬(BPTES)投与によって抑制された。さらに、心臓切片における線維化面積はAngiotensinⅡ投与群で顕著に増加し、AngiotensinⅡ+BPTES投与群では抑制された。同様に、線維化マーカーであるCol1a1の遺伝子発現も、AngiotensinⅡ投与群で増加し、AngiotensinⅡ+BPTES投与群では、有意に抑制された。 不全心筋におけるグルタミン代謝の役割を解明するため、 [U-13C5]-グルタミンを用いて、ラット初代培養心筋細胞の細胞内の標識代謝物の追跡を行った(stable isotope tracing)。AngiotensinⅡによる刺激でグルタミン由来の代謝物は増加し、阻害薬・siRNAによるGLS1の阻害によってその増加は抑制された。 以上の実験より心臓リモデリングを来した心臓ではグルタミン分解が亢進し、その阻害がリモデリングの抑制に繋がることを証明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の予定とは異なる心不全動物モデルを用いることとなったが、上述の通り極めて順調に進行している。
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今後の研究の推進方策 |
グルタミン分解の阻害が病的リモデリングの進展を抑制するメカニズムを解明する。現時点では細胞の成長・増殖に必要とされる核酸・脂質の構成材料であるアスパラギン酸・クエン酸に注目し、グルタミンがこれらの分子の炭素・窒素の供給源となっていることを明らかにした。一方、実際にグルタミン由来の炭素・窒素が核酸・脂質合成に利用されているのかどうかは不明であり、今後検証していく必要がある。さらには他の心不全モデルでも同様の現象が認められるのかを解明する。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験が順調にすすんだことで試薬の購入費が予定より抑えられた。次年度に持ち越して利用する。
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