研究課題
令和4年度は、臨床データの解析を主に遂行した。急性心筋梗塞に急性心不全を合併すると予後が悪化することが知られており、急性心筋梗塞合併急性心不全は重要な研究課題である。連続7,265例の急性心筋梗塞患者を解析した結果、1,931例に急性心不全の合併が認められた。Killip分類を用いてKillipクラスIIを軽度、クラスIIIを中等度、クラスIVを重度の心不全と定義すると、30日以内の院内死亡率は軽度、中等度、重度心不全例の順に上昇していた。Body mass index 25以上を過体重/肥満と定義し、上記急性心筋梗塞合併急性心不全例で30日以内の院内死亡率に対する過体重/肥満の影響を解析した結果、過体重/肥満は軽度心不全においては院内死亡率低下に関連するのに対し、重度心不全では院内死亡率上昇に関連していた。中等度心不全では過体重/肥満と院内死亡率に有意な関連は認められなかった。急性心筋梗塞合併急性心不全例では心不全の程度によって院内死亡率に対する過体重/肥満の影響が異なるという新たな知見であり、臨床上意義ある研究成果と考えられ、Progress in Cardiovascular Diseases誌に報告した (Matsushita K et al. Differential effects of overweight/obesity depending on the severity of heart failure complicating acute myocardial infarction in Japan. Prog Cardiovasc Dis. 2022 Dec 5: S0033-0620(22)00141-4. doi: 10.1016/j.pcad.2022.11.020. Online ahead of print)。
2: おおむね順調に進展している
肥満型心不全に対する臨床情報解析から研究を開始し、現在継続中である。臨床上ハイリスク群として知られている急性心筋梗塞合併急性心不全例における肥満型心不全例について詳細に検討した。連続7,265例の急性心筋梗塞患者を解析した結果、1,931例に急性心不全の合併が認められた。そのうち519例がBody mass index 25以上であり、過体重/肥満を呈していた。本研究ではKillip分類を用いてKillipクラスIIを軽度、クラスIIIを中等度、クラスIVを重度の心不全と定義し、軽度、中等度、重度心不全例における過体重/肥満と30日以内の院内死亡率の関連を解析した。1,931例の急性心不全例のうち軽度心不全は875例、中等度心不全は415例、重度心不全は641例であり、30日以内の院内死亡率は軽度、中等度、重度心不全例の順に上昇していた。過体重/肥満は軽度心不全においては院内死亡低下に関連するのに対し、重度心不全では院内死亡上昇に関連していた。中等度心不全では過体重/肥満と院内死亡に有意な関連は認められなかった。急性心筋梗塞合併急性心不全例では心不全の程度によって30日以内の院内死亡に対する過体重/肥満の影響が異なるという新たな知見であり、臨床上重要な研究成果と考えられ、Progress in Cardiovascular Diseases誌に報告した。今後も肥満と心不全の関連に対する解析を継続予定である。
臨床情報解析をさらに発展させる。研究計画に掲げていたとおり、最新の知見に基づいて検討項目を細かく変更していきながら研究を施行する。心不全を左室収縮能保持性心不全 (Heart Failure with preserved Ejection Fraction: HFpEF)と左室収縮能の低下した心不全 (Heart Failure with reduced Ejection Fraction: HFrEF)に分け、それぞれの臨床像と肥満の関連について研究を進め、肥満型HFpEFと肥満型HFrEFの臨床特性を明らかにする。心不全治療薬については、新規治療薬を含めて入院前の服薬状況から入院中の治療薬、退院時の投薬内容まで詳細に解析する。退院日以降は、心不全による再入院の有無、心不全死の有無、非心臓死の有無を含めた経過・予後の解析も施行する。さらに、肥満型心不全の分子機構の解明につながる分子生物学的研究へと発展させる。肥満型心不全の病態を制御している可能性のある標的シグナル・分子の探索へと研究を発展させ、新規治療標的についても検討する。未だ不明な点が多く複雑な病態である肥満型心不全の機序・修飾因子を解明し、新たな治療戦略へとつながる成果を得ることを目的として、これらの研究を継続する予定である。
理由:令和4年度に使用予定であった消耗品購入費用や成果発表・論文作成関連費用の一部を令和5年度に変更としたため。使用計画:令和4年度の使用予定としていた消耗品購入費用や成果発表・論文作成関連費用の一部を令和5年度に変更として使用予定であり、さらに研究を発展させる。
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Progress in Cardiovascular Diseases
巻: Online ahead of print ページ: -
10.1016/j.pcad.2022.11.020