現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
① FH85例およびFH疑い20例に次世代シークエンサーによる遺伝子解析を行った。FHの原因遺伝子変異は38例認め、LDLR遺伝子変異63.2%(24例)、PCSK-9遺伝子変異28.9%(11例)を認めた。また、ABCG5 (6.3%, 6/38)、ABCG8 (5.3%,2/38)、APOA5 (18.4%, 7/38) 変異がFH患者に合併していた。APOA5、ABCG5/ABCG8変異をLDLR、PCSK-9遺伝子変異に合併したpolygenetic変異症例は、冠動脈疾患の発症年齢が若年で再発例を多く認め(44% vs 30%)、今後その機序を検討する必要がある。 ② 臨床像の検討としては、320列冠動脈CTでの冠動脈病変の重症度scoreと頸動脈プラーク病変の重症度scoreは相関し(Sakai A, Sato K, et al投稿中)、冠動脈疾患と関連の知られる大動脈弁石灰化がLDLR/PCSK-9変異を認めるFHで多く認められた。 ③ T細胞の検討では、FH患者は末梢血中の①エフェクターメモリーT細胞と細胞障害性のあるエフェクターT細胞:IFNγ産生CD4 T細胞(Th1)、細胞障害性CD8 T細胞(CTL)が多く、②血中ORAIP、酸化LDLが高値で両者は相関していた。また、冠動脈バイパス術後症例の冠動脈粥腫組織では、血管平滑筋細胞に酸化LDLとORAIPが陽性で、血管平滑筋細胞のアポトーシスが認められ、LDL-Cによる酸化ストレスが冠動脈粥腫不安定化に関与することが示唆された(Sato K, et al. Heart Vessels, 36:1923-1932, 2021)。
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