研究課題/領域番号 |
21K08121
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
高野 博之 千葉大学, 大学院薬学研究院, 教授 (60334190)
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研究分担者 |
眞鍋 一郎 千葉大学, 大学院医学研究院, 教授 (70359628)
山口 憲孝 千葉大学, 大学院薬学研究院, 准教授 (80399469)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 心不全 / 拡張不全 / 治療法 / 性差 / バイオマーカー |
研究実績の概要 |
わが国の心不全患者数は年々増加している。心臓の左室収縮能を示す左室駆出率が低下した収縮不全の研究は進んでおり、診断・治療に関する知見は多い。一方、心不全症例の約半数は、左室駆出率が保たれた拡張不全であることがわかってきた。収縮不全は男性に多いが、拡張不全は女性に多いという興味深い特徴がある。また拡張不全患者は高齢者に多いため、超高齢社会を迎えたわが国において拡張不全に対する対応は重要課題であるが、拡張不全に対しエビデンスのある有効な治療薬は現時点で存在しない。最近、拡張不全を呈するマウスの作製方法が報告された。新規の拡張不全モデルマウスを用いて、性差や加齢などの視点から多角的アプローチにより病態を解明する研究は、国内外でもまだ進んでいないことから学術的独自性の高い研究と考えられる。 令和3年度は、(1) 雄マウスと雌マウス、(2) 若齢マウスと老齢マウス(1.5歳~2歳)に分けて、拡張不全モデルマウスを作製した。引き続き令和4年度は、若齢の雄マウスと老齢の雄マウスおよび雌マウスに対し高脂肪食とL-NAMEを与え、0、5、15週目に心エコーで心機能を評価した。投与前の高齢マウスは若齢マウスと比較して、軽度の心肥大と左心室収縮力の緩やかな低下を認めた。高齢マウスの心機能で明らかな性差は認められなかった。5週目には、若齢マウスは拡張機能障害と心肥大を示した。対照的に、一部の高齢マウスでは左室収縮力が著しく低下し重症心不全を発症したが、若齢マウスでは認められなかった。これら結果は、拡張不全モデルでは年齢や性別による違いがある可能性を示している。現在、各群のマウスの心臓を用いて、生化学的、分子生物学的、病理学的評価を行い、拡張不全の発症機構の差異を解析している。今後、老齢の雌雄マウスも用いてさらなる検討を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
申請者の研究グループでは、これまで心不全モデルマウスを使った実験を継続的に行い、多くの研究成果を発表してきた。しかし、心不全モデルの作製者と心エコー解析者が交代したことにより、再現性のある拡張不全モデルマウスの作製と心機能評価が可能となるまである程度の時間を要した。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度は拡張不全モデルマウスを用いて、(1) 雄マウスと雌マウス、(2) 若齢マウスと老齢マウス(1.5歳~2歳)に分けて性差や加齢により拡張不全への発症・進行に違いがあるかを検討する。さらに、(3) 老齢マウスの雄と雌でも同様に違いが認められるか検討する。拡張不全における差異が認められれば、各群のマウスの心臓を用いて、生化学的、分子生物学的、病理学的評価を行い、拡張不全の発症機構の差異を解析する。性差の影響を検証するために、雄マウスに対しては去勢を行うかアンドロゲン受容体阻害薬を投与し、雌マウスに対しては卵巣摘出を行い解析を進める。さらにRNA-seqによるトランスクリプトーム解析を行い、性差・加齢による差異に関連する発現変動遺伝子を同定する。進捗状況により学会等で研究成果を随時発表する。
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